それからというもの
休み時間になればナチ達と学校を使って鬼ごっこをして走りまくってたのに珍しく先生には会わなかった
あたし、避けられてんのかな…
昼休みも、その後の休み時間も出会うことはなかった。
帰る準備をしていたらふと教科書からはみ出てる1枚の紙を見つけた
絶対あたしのじゃない、こんなに可愛い紙持ってないもん
「なにこれ」
そこには可愛い文字で
「放課後屋上で待ってます。必ず来てください」
と書いてあった
ま、麻央ちゃんだ絶対
ナチがあたしに気づきその紙を読み上げた
「なにこれキモすぎだろ、行かなくていいよ危ないってこれあの女だろ」
怖いけどなぜか好奇心が勝ってる
1度ちゃんと話がしたい
「よし決着つけてくるか」
「やめときなってあお何されるかわかんねぇよ」
「なんかあったら連絡するわ」
「ほんと言うこと聞かない子だね」
「えへへへ懲らしめてきてやるよ」
「もうしらないよあたしは」
「任せろって」
あたしは軽快に屋上へ向かった
何度か胃がキリキリして引き返そうになったけどそれじゃダサくて納得いかなかった
屋上のドアノブに手をかける
あぁ絶対麻央ちゃんいる、怖い
あたし殺されないかな
何言われるんだろ
だけど
「行かなきゃ」
屋上の扉はいつもより重くずっしりしていた
ギィと音たてて扉を開くと
そこには
麻央ちゃんと先生がいた
麻央ちゃんはこっちに気がついてニコッとはにかんだ
何故か胸騒ぎがする
その瞬間
麻央ちゃんは
先生の胸ぐらを掴んで
キスをした。
何が起こってる?これ現実?
私は思わず手に持ってたカバンを落としてしまった
それに気づいた先生が麻央ちゃんを突き飛ばした
「葵っ!!!」
驚いた顔、であたしの名前を言った
「これは違うんだよっ!!!!」
先生がそうあたしに叫んだ
何が違うの?
2人は付き合ってたの?
ありえない
それこそ犯罪だろ
無理やりされたのなんて目に見えてわかるのに
疑ってしまう。
今はショックの方が大きい
麻央ちゃんは勝ち誇ってる顔をしてる
今すぐここから逃げ出したいのに
足が動かない
麻央が口を開いた
「あたしの先生取らないでよ…邪魔者」
「あ、ありえないよ」
今はそんなことしか言えない
先生があたしに走って近ずいてきた
私は先生から逃げるように走り出した
後ろから
「葵っ待って!!!」
って先生が言った
待つわけないだろ
気持ち悪い
だめだ鳥肌が止まらない
やっと自分の気持ちに正直になれたのに
こんなのってほんとにあるんだ…
麻央side______
噂を広めたのは私
だけど一瞬で無かったことになった
きっと葵ちゃんの口からしてないって言ったんだろうな
葵ちゃんの影響ってすごいなぁ
だけどこんなので終わると思うなよ。
私は朝から職員室で先生が出てくるのを待って
先生に放課後屋上でちゃんと話したいって言った
先生はすんなり受け入れてくれた。
だから私は葵ちゃんの教室を特定して教科書の間に紙を挟んで見えるように仕掛けた
「放課後屋上に来るように」と
これで作戦はきっと成功する
噂を広めるなんてもうどうでもいい
実際に目で見てショックで心も失うくらいになればそれでいい
それが私の先生を奪った罰だから。
放課後。
屋上に吹く風は今から起こることを何も知らないかのように心地よかった。そりゃ知るはずないもんね
――来る。
必ず、葵ちゃんと先生は来る。
•
先生が来たのは、放課後チャイムが鳴ってから7分後だった。
「こんなとこで話すんの?寒くね?」
少し距離を取って、先生は立っていた。
“それでいいの、先生”
簡単に来てくれただけで満足しちゃうくらい、ほんとはあたし、寂しかったんだよ。
でも、そんな気持ちは全部しまう。
この顔を見て、この距離で話せる今が、
今日できっと、最後だから。
「ねぇ先生」
あたしは風の中で一歩近づく。
先生の眉がわずかに寄る。
「どうして……麻央じゃダメだったの?」
「それはもう話しただろ?LINEにも書いたしちゃんと伝えたつもりだけど?」
「納得なんてできてない!!ずっと先生を見てきたんだよ? ずっと、ずっと見てきたのに、どうしてっ!!」
下を向いてぐしゃっとスカートの裾を握りしめる。
きっと今先生は困った顔をしてるんだろうな
「……先生、葵ちゃんが好きなんでしょ」
言った瞬間、先生の目が一瞬だけ泳いだ。
確定だ。
あの時の図書室での空気も、手を繋いでた帰り道のことも、全部知ってる。
先生が眉をひそめた。
「…んなわけ」
「二人が話す時の距離感もその声も目も麻央の知ってる“先生”じゃなかったよ」
笑ってるのに、涙が勝手に出てくる。
「その目を、麻央には一度も向けてもらえなかった。こんなに、必死に先生を求めても……」
•
「麻央、俺はっ」
扉の向こうから足音が聞こえる。やっと来た
「じゃあ、最後にさ、キス、していい?」
「は?いい訳ねぇだろ」
「それで終わりにするからっ」
その瞬間――
屋上の扉が、ギィッと鈍く音を立てて開いた。
やっと来てくれたね葵ちゃん、
今から見て絶望してよ。そこが一番の特等席だよ
先生は1歩、下がろうとした
だから胸ぐらをつかんで
先生にキスをした
先生は、麻央のものなんだよ?
泣きたくなるでしょ?頭おかしくなるでしょ?
私も、毎日そうだった、同じ気持ち味わえよ
目の端に、カバンを落として唖然としてる葵ちゃんの姿が映る。
――計画通り。
先生の目が大きく見開かれる。
その直後、私の身体は、強く突き飛ばされた。
痛みなんか今はどうでもいい。
だけど
先生の顔が、葵ちゃんに向いて名前を言ったその瞬間――
ああ、やっぱり。
こうやって気づきたくなかったけど
私の居場所なんて、最初からなかったんだ
なんで麻央じゃないの
なんで好きになってくれないの
どれだけ先生に触れても。
どれだけ側にいても。
私は、選ばれなかった。
私だけは、見てもらえなかった。
なのに、どうしてあの子は――?
「麻央の先生取らないでよ…邪魔者」
考えるよりも先に口が動いていた
歪む感情の奥で、うっすらと笑った。
葵ちゃんの顔はどんどん青ざめて、
そして逃げるように走り出した。
先生は私に「金輪際俺に近づくな」と言って
葵ちゃんの後を慌てて追う。
嫌われることなんて正直大前提だった
──その場にひとり残った私は、
地面に座ったまま、唇に指を当てていた。
泣きたいのに涙はもうとっくに枯れてしまった
キスをした唇は、
何も感じなかった。
キスには相性があるってどこかで聞いたことがある。それがほんとなら先生とは合わなかった
もうこれでいいんだ
先生の記憶の中であたしが刻まれてるなら、それで本望だ
私の中で、何かが崩れ落ちる音がする。
私は、ただ大切な居場所を取り戻したかっただけなのに
そんな居場所すらなくなっちゃった
あの頃が懐かしいなぁ
クラスの子から酷いことをされると、先生はいつでも守ってくれて、何があっても味方でいてくれた、それなのに今は拒絶されて、私何やってんだろ
私が悪かったのかっ
好きになるんじゃなかった
先生の“1番“になりたかった。だれよりも特別な生徒に。
他の子と微笑んでる先生が、
葵ちゃんの頭を、愛おしそうに撫でる先生が、
何も言わずに私から離れていく先生が……
全部、全部、許せなかった。
本当は、こんなことしたくなかった。
初めは私と同じくらい、辛い気持ちになってくれたらそれでよかった。
だけどもう要らないや
なんでこんなに
先生のこと好きだったんだろ。
ただ依存してたんだ、私
もしここで飛び降りたら、先生は自分のせいだと感じてずっと私のこと考えてくれるかな?
麻央side______END______
清川先生side_________
職員室を出るとそこには麻央がいた
正直あのLINEのせいで何されるかわかんなくてめっちゃ怖かった。
麻央に言われたのは
「終礼終わりのチャイムがなったらすぐ屋上に来て欲しい、話がしたい」
ただそれだけだった
それだけで終わると思ってなくて、改心したんだなとか思ってた。
珍しく今日は葵と出くわさなかった
いつもなら休み時間にどこからともなく現れて、無駄に騒がしい声で俺に絡んでくるくせに。
俺やっぱり避けられてんだな…
あぁ葵に会いたい
終礼のチャイムが鳴った。
職員室を出る。屋上へと足を向けた。
麻央はもういた。風にスカートを揺らして、俺を見上げてくる。
その顔がどこか安心したようで、不自然な気がしたのは──
たぶん、俺の直感だったんだろう。
「こんなとこで話すのか?寒くね?」
自然な会話をして、できるだけ距離を取る。俺は、あくまで教師で、彼女は生徒。
「先生……どうして、麻央じゃダメだったの?」
「それはもう話しただろ?LINEにも書いたし、ちゃんと伝えた」
「理解なんてできない!!納得なんて……できないよ!!」
麻央が叫ぶ。
風の音がそれを切り裂いて、遠くに押しやった。
スカートの裾を握る彼女の指が震えている。
「先生、葵ちゃんが好きなんでしょ?」
その名前が出た瞬間、俺は一瞬、言葉に詰まった。
図星を突かれた
でも、だからって認めるわけにはいかない。
「……んなわけ」
「二人で話す時の距離感も、その声も麻央が知ってる“先生”じゃなかったよ。その目を、麻央には一度も向けてもらえなかった。こんなに、必死に先生を求めても……」
その言葉に、胸が詰まった。
麻央がどれだけ俺を見ていたか、どれだけ傷ついてきたか。
だからって、踏み込んではいけない線がある。
けどいつもこうやって麻央に流されてきたんだ
「麻央、俺は」
「じゃあ、最後にさ、キス、してもいい?」
「は? いい訳ねぇだろ」
「それで終わりにするからさっ」
まずいと思って1歩下がったら
麻央が胸ぐらを掴んできた。
まさかと思った次の瞬間、唇が塞がれた。
……今、何が起こってる?
抵抗する間もなく、麻央の顔が近すぎて、思考が追いつかない。
次の瞬間、背後で──重く、ドアが開く音がした。
ギィ……
その音で我に返った。
──やばい。
振り返ると、そこには。
葵。
最悪だ。これがこの女のやりたかったことか?
葵が俺を見てる。
麻央が俺に何をしたか、すべてを見てしまった顔で。
信じてた何かが一気に崩れたような目で。
「葵っ!!!」
俺は麻央を強く突き飛ばした。
「これは違うんだよ!!」
叫んだ。でも、届かない。
葵の目にはもう、俺が“気持ち悪い大人”にしか見えていないんだろう。
麻央が勝ち誇ったような顔で呟いた。
「麻央の先生取らないでよ……邪魔者」
──やめろ。
葵をもうこれ以上傷つけんな
葵は、その言葉に耐えきれず、走り出した。
「葵っ待って!! !!!」
俺も追う。
追うしかない。
たとえ、もう二度と信じてもらえなくても。
あの目だけは──もう見たくない。
その前に俺は麻央に最後
「金輪際俺に近づくな」
と言った
冷たい言葉だった。
でも、それが俺の精一杯だった。
教師じゃなかったら殴ってたわ
逃げた葵の後を、俺は全力で走る。
俺のことを、きっと心から信じて、頼って、
沢山相談してくれて、沢山笑ってたあの日々が
取り戻せるなら、なんだってする
教師として終わったっていい。
どうせ教師なんて最初から向いてないし
俺は、もう葵を傷つけたくなかったんだ。
清川先生side_____END____
休み時間になればナチ達と学校を使って鬼ごっこをして走りまくってたのに珍しく先生には会わなかった
あたし、避けられてんのかな…
昼休みも、その後の休み時間も出会うことはなかった。
帰る準備をしていたらふと教科書からはみ出てる1枚の紙を見つけた
絶対あたしのじゃない、こんなに可愛い紙持ってないもん
「なにこれ」
そこには可愛い文字で
「放課後屋上で待ってます。必ず来てください」
と書いてあった
ま、麻央ちゃんだ絶対
ナチがあたしに気づきその紙を読み上げた
「なにこれキモすぎだろ、行かなくていいよ危ないってこれあの女だろ」
怖いけどなぜか好奇心が勝ってる
1度ちゃんと話がしたい
「よし決着つけてくるか」
「やめときなってあお何されるかわかんねぇよ」
「なんかあったら連絡するわ」
「ほんと言うこと聞かない子だね」
「えへへへ懲らしめてきてやるよ」
「もうしらないよあたしは」
「任せろって」
あたしは軽快に屋上へ向かった
何度か胃がキリキリして引き返そうになったけどそれじゃダサくて納得いかなかった
屋上のドアノブに手をかける
あぁ絶対麻央ちゃんいる、怖い
あたし殺されないかな
何言われるんだろ
だけど
「行かなきゃ」
屋上の扉はいつもより重くずっしりしていた
ギィと音たてて扉を開くと
そこには
麻央ちゃんと先生がいた
麻央ちゃんはこっちに気がついてニコッとはにかんだ
何故か胸騒ぎがする
その瞬間
麻央ちゃんは
先生の胸ぐらを掴んで
キスをした。
何が起こってる?これ現実?
私は思わず手に持ってたカバンを落としてしまった
それに気づいた先生が麻央ちゃんを突き飛ばした
「葵っ!!!」
驚いた顔、であたしの名前を言った
「これは違うんだよっ!!!!」
先生がそうあたしに叫んだ
何が違うの?
2人は付き合ってたの?
ありえない
それこそ犯罪だろ
無理やりされたのなんて目に見えてわかるのに
疑ってしまう。
今はショックの方が大きい
麻央ちゃんは勝ち誇ってる顔をしてる
今すぐここから逃げ出したいのに
足が動かない
麻央が口を開いた
「あたしの先生取らないでよ…邪魔者」
「あ、ありえないよ」
今はそんなことしか言えない
先生があたしに走って近ずいてきた
私は先生から逃げるように走り出した
後ろから
「葵っ待って!!!」
って先生が言った
待つわけないだろ
気持ち悪い
だめだ鳥肌が止まらない
やっと自分の気持ちに正直になれたのに
こんなのってほんとにあるんだ…
麻央side______
噂を広めたのは私
だけど一瞬で無かったことになった
きっと葵ちゃんの口からしてないって言ったんだろうな
葵ちゃんの影響ってすごいなぁ
だけどこんなので終わると思うなよ。
私は朝から職員室で先生が出てくるのを待って
先生に放課後屋上でちゃんと話したいって言った
先生はすんなり受け入れてくれた。
だから私は葵ちゃんの教室を特定して教科書の間に紙を挟んで見えるように仕掛けた
「放課後屋上に来るように」と
これで作戦はきっと成功する
噂を広めるなんてもうどうでもいい
実際に目で見てショックで心も失うくらいになればそれでいい
それが私の先生を奪った罰だから。
放課後。
屋上に吹く風は今から起こることを何も知らないかのように心地よかった。そりゃ知るはずないもんね
――来る。
必ず、葵ちゃんと先生は来る。
•
先生が来たのは、放課後チャイムが鳴ってから7分後だった。
「こんなとこで話すんの?寒くね?」
少し距離を取って、先生は立っていた。
“それでいいの、先生”
簡単に来てくれただけで満足しちゃうくらい、ほんとはあたし、寂しかったんだよ。
でも、そんな気持ちは全部しまう。
この顔を見て、この距離で話せる今が、
今日できっと、最後だから。
「ねぇ先生」
あたしは風の中で一歩近づく。
先生の眉がわずかに寄る。
「どうして……麻央じゃダメだったの?」
「それはもう話しただろ?LINEにも書いたしちゃんと伝えたつもりだけど?」
「納得なんてできてない!!ずっと先生を見てきたんだよ? ずっと、ずっと見てきたのに、どうしてっ!!」
下を向いてぐしゃっとスカートの裾を握りしめる。
きっと今先生は困った顔をしてるんだろうな
「……先生、葵ちゃんが好きなんでしょ」
言った瞬間、先生の目が一瞬だけ泳いだ。
確定だ。
あの時の図書室での空気も、手を繋いでた帰り道のことも、全部知ってる。
先生が眉をひそめた。
「…んなわけ」
「二人が話す時の距離感もその声も目も麻央の知ってる“先生”じゃなかったよ」
笑ってるのに、涙が勝手に出てくる。
「その目を、麻央には一度も向けてもらえなかった。こんなに、必死に先生を求めても……」
•
「麻央、俺はっ」
扉の向こうから足音が聞こえる。やっと来た
「じゃあ、最後にさ、キス、していい?」
「は?いい訳ねぇだろ」
「それで終わりにするからっ」
その瞬間――
屋上の扉が、ギィッと鈍く音を立てて開いた。
やっと来てくれたね葵ちゃん、
今から見て絶望してよ。そこが一番の特等席だよ
先生は1歩、下がろうとした
だから胸ぐらをつかんで
先生にキスをした
先生は、麻央のものなんだよ?
泣きたくなるでしょ?頭おかしくなるでしょ?
私も、毎日そうだった、同じ気持ち味わえよ
目の端に、カバンを落として唖然としてる葵ちゃんの姿が映る。
――計画通り。
先生の目が大きく見開かれる。
その直後、私の身体は、強く突き飛ばされた。
痛みなんか今はどうでもいい。
だけど
先生の顔が、葵ちゃんに向いて名前を言ったその瞬間――
ああ、やっぱり。
こうやって気づきたくなかったけど
私の居場所なんて、最初からなかったんだ
なんで麻央じゃないの
なんで好きになってくれないの
どれだけ先生に触れても。
どれだけ側にいても。
私は、選ばれなかった。
私だけは、見てもらえなかった。
なのに、どうしてあの子は――?
「麻央の先生取らないでよ…邪魔者」
考えるよりも先に口が動いていた
歪む感情の奥で、うっすらと笑った。
葵ちゃんの顔はどんどん青ざめて、
そして逃げるように走り出した。
先生は私に「金輪際俺に近づくな」と言って
葵ちゃんの後を慌てて追う。
嫌われることなんて正直大前提だった
──その場にひとり残った私は、
地面に座ったまま、唇に指を当てていた。
泣きたいのに涙はもうとっくに枯れてしまった
キスをした唇は、
何も感じなかった。
キスには相性があるってどこかで聞いたことがある。それがほんとなら先生とは合わなかった
もうこれでいいんだ
先生の記憶の中であたしが刻まれてるなら、それで本望だ
私の中で、何かが崩れ落ちる音がする。
私は、ただ大切な居場所を取り戻したかっただけなのに
そんな居場所すらなくなっちゃった
あの頃が懐かしいなぁ
クラスの子から酷いことをされると、先生はいつでも守ってくれて、何があっても味方でいてくれた、それなのに今は拒絶されて、私何やってんだろ
私が悪かったのかっ
好きになるんじゃなかった
先生の“1番“になりたかった。だれよりも特別な生徒に。
他の子と微笑んでる先生が、
葵ちゃんの頭を、愛おしそうに撫でる先生が、
何も言わずに私から離れていく先生が……
全部、全部、許せなかった。
本当は、こんなことしたくなかった。
初めは私と同じくらい、辛い気持ちになってくれたらそれでよかった。
だけどもう要らないや
なんでこんなに
先生のこと好きだったんだろ。
ただ依存してたんだ、私
もしここで飛び降りたら、先生は自分のせいだと感じてずっと私のこと考えてくれるかな?
麻央side______END______
清川先生side_________
職員室を出るとそこには麻央がいた
正直あのLINEのせいで何されるかわかんなくてめっちゃ怖かった。
麻央に言われたのは
「終礼終わりのチャイムがなったらすぐ屋上に来て欲しい、話がしたい」
ただそれだけだった
それだけで終わると思ってなくて、改心したんだなとか思ってた。
珍しく今日は葵と出くわさなかった
いつもなら休み時間にどこからともなく現れて、無駄に騒がしい声で俺に絡んでくるくせに。
俺やっぱり避けられてんだな…
あぁ葵に会いたい
終礼のチャイムが鳴った。
職員室を出る。屋上へと足を向けた。
麻央はもういた。風にスカートを揺らして、俺を見上げてくる。
その顔がどこか安心したようで、不自然な気がしたのは──
たぶん、俺の直感だったんだろう。
「こんなとこで話すのか?寒くね?」
自然な会話をして、できるだけ距離を取る。俺は、あくまで教師で、彼女は生徒。
「先生……どうして、麻央じゃダメだったの?」
「それはもう話しただろ?LINEにも書いたし、ちゃんと伝えた」
「理解なんてできない!!納得なんて……できないよ!!」
麻央が叫ぶ。
風の音がそれを切り裂いて、遠くに押しやった。
スカートの裾を握る彼女の指が震えている。
「先生、葵ちゃんが好きなんでしょ?」
その名前が出た瞬間、俺は一瞬、言葉に詰まった。
図星を突かれた
でも、だからって認めるわけにはいかない。
「……んなわけ」
「二人で話す時の距離感も、その声も麻央が知ってる“先生”じゃなかったよ。その目を、麻央には一度も向けてもらえなかった。こんなに、必死に先生を求めても……」
その言葉に、胸が詰まった。
麻央がどれだけ俺を見ていたか、どれだけ傷ついてきたか。
だからって、踏み込んではいけない線がある。
けどいつもこうやって麻央に流されてきたんだ
「麻央、俺は」
「じゃあ、最後にさ、キス、してもいい?」
「は? いい訳ねぇだろ」
「それで終わりにするからさっ」
まずいと思って1歩下がったら
麻央が胸ぐらを掴んできた。
まさかと思った次の瞬間、唇が塞がれた。
……今、何が起こってる?
抵抗する間もなく、麻央の顔が近すぎて、思考が追いつかない。
次の瞬間、背後で──重く、ドアが開く音がした。
ギィ……
その音で我に返った。
──やばい。
振り返ると、そこには。
葵。
最悪だ。これがこの女のやりたかったことか?
葵が俺を見てる。
麻央が俺に何をしたか、すべてを見てしまった顔で。
信じてた何かが一気に崩れたような目で。
「葵っ!!!」
俺は麻央を強く突き飛ばした。
「これは違うんだよ!!」
叫んだ。でも、届かない。
葵の目にはもう、俺が“気持ち悪い大人”にしか見えていないんだろう。
麻央が勝ち誇ったような顔で呟いた。
「麻央の先生取らないでよ……邪魔者」
──やめろ。
葵をもうこれ以上傷つけんな
葵は、その言葉に耐えきれず、走り出した。
「葵っ待って!! !!!」
俺も追う。
追うしかない。
たとえ、もう二度と信じてもらえなくても。
あの目だけは──もう見たくない。
その前に俺は麻央に最後
「金輪際俺に近づくな」
と言った
冷たい言葉だった。
でも、それが俺の精一杯だった。
教師じゃなかったら殴ってたわ
逃げた葵の後を、俺は全力で走る。
俺のことを、きっと心から信じて、頼って、
沢山相談してくれて、沢山笑ってたあの日々が
取り戻せるなら、なんだってする
教師として終わったっていい。
どうせ教師なんて最初から向いてないし
俺は、もう葵を傷つけたくなかったんだ。
清川先生side_____END____



