あれからあたしは無我夢中に走って帰ってきてお風呂も入らずにベットに寝転がった
寝たくても寝れないし音楽を聴いても雑音にしかならない
明日から学校行くの嫌だな…
勝手に拗ねて勝手に帰ってきて何がしたかったんだよ
なにやってんだろ、あたし。
麻央ちゃんが悪いわけじゃない。
先生だって、別に何かしてきたわけじゃない。
急になんかおかしいと思った
今まで平気だったのに、今日はなぜか無理だった。
図書室での空気も、あの距離感も、先生といる時間も
全部、
勝手にモヤモヤして、勝手になぜか傷ついてるだけ。
「……バカみたい」
そう呟いても何も解決はしない
どうしたらいいんだよ、どうすれば良かったんだよ。何が正解で何が間違いか何も分からない
「ただいまー!」
こーすけが帰ってきた
今は誰の顔も見たくない。
あたしは自分の心を閉ざすように部屋の鍵をかけた。
こーすけの足音があたしの部屋の前で止まった
「葵?帰ってんの?」
「…」
「なんかあった?話なら聞くよ?」
「今はほっといて」
「あの先生のこと?」
「ほっとけって言ってんだろ!!」
「今ほっといたらダメな気がする」
「いいってそんなん」
「じゃあご飯作ってくるからちゃんと食べろよ」
「…ん」
こーすけの足音が階段を下りていった。
玄関のドアが閉まる音も、
冷蔵庫が開く音も、
テレビのリモコンをカチカチいじる音も、
全部が妙に耳に届いてきて、逆に落ち着かない。
もうやだ
ひとりでぐるぐる考えるのやめたい
でもさっきみたいに誰かに優しくされるのも、それはそれでしんどい。
情けない。
どうしようもなく情けない。
自分のことなのに、自分でうまく整理できなくて、
感情が先に動いて、言葉や行動が後からそれに追いつかない。
あたしって、こんなにめんどくさい奴だったっけ?
ベッドの中で抱きしめたクッションがじんわりと湿ってる。
涙なんて、もう出したくなかったのに。
一方その頃
清川先生side____
葵が悲しそうな顔をして帰っていった。
引き止めたかった、走って葵の手を取りたかっただけど俺はただの先生だから。
「どうすりゃいいんだよっ」
頭を抱えて悩んでも何も解決しない
わかってる。俺が悪いことも
葵に近ずき過ぎたんかな。
俺やっぱり教師向いてねぇわ
「よっ大丈夫か?!」
「なんだうっしーか」
「坂木じゃなくて悪かったな」
牛沢先生が笑顔で図書室に入ってきた
俺今そのノリ出来ねぇぞ
「坂木がさっき猛ダッシュで帰ってったけどなんかあった?」
「なんもねぇよ」
「そんなんじゃお前レトに取られんぞ〜」
「なんでレト?」
「レトが坂木のこと好きらしいわレトから聞いた」
「へ〜青春してんな」
すごくムカついた。
けど俺は先生だから
葵と付き合えるわけもないし
きっと俺なんかよりもレトとの方がお似合いなんだよ
「だけど今日インスタ交換しようとしたらしてないって言われたらしい」
「あいつインスタやってんぞ?」
「要するに坂木はレトに興味無いんだよ、可哀想だよな」
すごく嬉しかった
レトに勝った気がした
「しかも話してる時ずっとお前のこと見てたって」
「は?」
なんだよそれ
「どうせキヨは好きなんだろ?」
「顔みたらお前が坂木のこと特別視してんのわかるぞ」
「してねぇ、し」
「何年の付き合いだと思ってんの?嘘ついても無駄だよ」
「俺やっぱ教師向いてねぇわ」
「俺は合ってると思うけどな?そこまで生徒に真剣に向き合えるのも、好きになれるのはキヨにしかできないと思うよ」
「うっしー」
「ん?」
「こんなに人を好きなったの初めてなんだよ
今さら引き返せないくらい、葵のことが好きなんだよ」
こうやって言葉に出してみたかった
誰かにこの気持ちを言いたかった。
立場なんて、忘れるくらい葵の笑った顔も、怒った顔も、全部、胸に焼きついてる。
「元カノが可哀想」
「あいつも好きだったけど、こんなにも守ってやりたいとか、楽しませてやりたいとか思うのは葵だけなんだよ」
「坂木と向き合いたいなら麻央としっかり折り合いつけた方がいいんじゃない?そっちが先だと思うけど?」
「やっぱりそうだよな、なぁなぁになってるから」
「お前優しすぎるんだよ」
「俺がキッパリ好きじゃないって言った方がいい?俺殺されない?」
「かすり傷くらいは付きそうだな」
「まじで手に負えないくらい暴走しそうで怖いんだよあいつ」
「そうさせたのはキヨだけどな」
「何も言えねぇ」
「依存させたかった訳じゃねぇけど、あの頃は俺、麻央に必要とされるのが嬉しかったんだよ」
「やりすぎだな、怒らないといけないとこはしっかりしないと、それが教師じゃないの?」
「もう教師やめてぇ職務放棄したい」
「寂しいだろ俺が」
「きも」
牛沢がふっと笑った
「けど坂木とも麻央ともちゃんと向き合わないと、後悔するぞ」
その言葉が、妙に胸に刺さった。
今までどうにかなると思って、避けてきたから麻央との関係がこうなってるんだ
葵とも
自分は先生で、立場があって、線を引かなきゃいけないのにそれができてなかった。
全部俺が悪い
「お前が正しいと思ったらそれが正解なんだよ」
「けど今何もかも正しいって思ってないだろ」
「なんで分かんだよ」
「俺ら友達だからな」
「なんかうぜぇー」
そう言いながらも、俺の口元には自然と笑顔が浮かんでいた。
久々に、少し前向きになれた気がした。
その夜、俺は珍しく長文のLINEを打った。
麻央にしっかり伝えるんだ。
これで関係は終わりにしたい。
ちゃんとした生徒と先生の関係に
俺が悪いこともしっかり伝えて。
《麻央、ごめん。
俺は、お前のことを好きになることはできない。
正直に言う。
手を繋ぐのも、抱きついてくるのも、こうしてLINEをするのも、もうやめよう。
麻央に必要とされるのが嬉しかった。
でも、それに甘えて、中途半端な関係にしてしまったのは俺の責任だ。
拒まなかったのも、ちゃんと止めなかったのも、俺だ。
だから、もし恨まれても仕方ないと思ってる。
本当にごめん。
でも、麻央には――俺なんかより、もっとちゃんと向き合ってくれる人が必ず現れる。
俺も、しっかり向き合いたい人がいるんだ。
だから今日でちゃんと、一線を引こう。》
送信ボタンを押したあと、しばらく画面を見つめたまま動けなかった。
既読はまだつかない。
携帯を伏せて目を閉じたその瞬間、
――バイブ音が鳴った。
「……麻央?」
画面には、麻央から返信がきた
《…わかってたよ。
いつかこうなるって。
でも言ってほしかった。
ちゃんと、正直に、最初から。
葵ちゃんが好きなんでしょ?
葵ちゃんを見るその優しい目、あたしには向けたことなかったよね。先生ってほんとずるいね
私これからどうしたらいいの?先生がいない人生なんて耐えられない
今までの全部、返してよ。許さないから。》
怖くてスマホを落としてしまった
俺殺されんのかな。
俺は返事を返さなかった
いや返す言葉が見つからなかった
明日からどうしたらいいんだよ
俺恨まれたわ
生霊の1人2人くらいつきそう
……まぁ俺が悪いんだけどな
清川先生side ___END___
麻央side____
先生から久しぶりにLINEが来たと思ったら
なにこれ。まじであり得ない
私から逃げられると思うなよ先生
これで終わらせたつもり?
勝手に全部“ごめん”で済ませた気?
ふざけんな
私がどれだけ、どれだけ先生のこと――
どんな顔見て、どんな声聞いて、どんな気持ちでいたと思ってんの?
向き合いたい人ってあの子のこと?
ほんと邪魔だな
葵ちゃんが全部悪いんだ
葵ちゃんが先生のことはぶらかして、こんな風にさせたんだ。じゃなきゃありえない。私がどれほどアピールしても好きになってくれなかったのに
私は、ずっとずっと――先生だけを見てきたのに。
私がどれだけ手を伸ばしてもダメだったのに。
たった4日間で…私はもう2年の付き合いなのに
どうして私じゃ、だめなの?
先生のことなんでもわかってるのに
先生っ
私の2年間。
私の全部。
私が伝えたこの気持ちも、全部返してよっ!!!
先生があたしを“切った”こと、
絶対に許さない。
麻央side _____END_____
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こーすけが作ってくれたご飯を食べながら
我にしっかり帰って考えてみた
答えなんて沢山あるけど心のモヤモヤに当てはまるのもなんてなかった。
1つ近いとしたら、あたしが先生のことを無意識の間に好きになってて、たけど先生を好きになるなんてありえないし、そんな自分が気持ち悪い
あと距離感が友達みたいに近い
きっとこれなんだろうな
でも、認めたくなかった
てかなんでこんなに悩んでんの?
それすらも嫌だ。もう全部嫌
勝手に拗ねて勝手に帰ってきてほんと何がしたかったんだろ
普段のあたしなら絶対こんな事しないのに…
気まずいし当分図書室は行かないでおこうかな
当番も藤井に任せよ。
先生に会ったらどんな顔したらいいんだよ…
寝たくても寝れないし音楽を聴いても雑音にしかならない
明日から学校行くの嫌だな…
勝手に拗ねて勝手に帰ってきて何がしたかったんだよ
なにやってんだろ、あたし。
麻央ちゃんが悪いわけじゃない。
先生だって、別に何かしてきたわけじゃない。
急になんかおかしいと思った
今まで平気だったのに、今日はなぜか無理だった。
図書室での空気も、あの距離感も、先生といる時間も
全部、
勝手にモヤモヤして、勝手になぜか傷ついてるだけ。
「……バカみたい」
そう呟いても何も解決はしない
どうしたらいいんだよ、どうすれば良かったんだよ。何が正解で何が間違いか何も分からない
「ただいまー!」
こーすけが帰ってきた
今は誰の顔も見たくない。
あたしは自分の心を閉ざすように部屋の鍵をかけた。
こーすけの足音があたしの部屋の前で止まった
「葵?帰ってんの?」
「…」
「なんかあった?話なら聞くよ?」
「今はほっといて」
「あの先生のこと?」
「ほっとけって言ってんだろ!!」
「今ほっといたらダメな気がする」
「いいってそんなん」
「じゃあご飯作ってくるからちゃんと食べろよ」
「…ん」
こーすけの足音が階段を下りていった。
玄関のドアが閉まる音も、
冷蔵庫が開く音も、
テレビのリモコンをカチカチいじる音も、
全部が妙に耳に届いてきて、逆に落ち着かない。
もうやだ
ひとりでぐるぐる考えるのやめたい
でもさっきみたいに誰かに優しくされるのも、それはそれでしんどい。
情けない。
どうしようもなく情けない。
自分のことなのに、自分でうまく整理できなくて、
感情が先に動いて、言葉や行動が後からそれに追いつかない。
あたしって、こんなにめんどくさい奴だったっけ?
ベッドの中で抱きしめたクッションがじんわりと湿ってる。
涙なんて、もう出したくなかったのに。
一方その頃
清川先生side____
葵が悲しそうな顔をして帰っていった。
引き止めたかった、走って葵の手を取りたかっただけど俺はただの先生だから。
「どうすりゃいいんだよっ」
頭を抱えて悩んでも何も解決しない
わかってる。俺が悪いことも
葵に近ずき過ぎたんかな。
俺やっぱり教師向いてねぇわ
「よっ大丈夫か?!」
「なんだうっしーか」
「坂木じゃなくて悪かったな」
牛沢先生が笑顔で図書室に入ってきた
俺今そのノリ出来ねぇぞ
「坂木がさっき猛ダッシュで帰ってったけどなんかあった?」
「なんもねぇよ」
「そんなんじゃお前レトに取られんぞ〜」
「なんでレト?」
「レトが坂木のこと好きらしいわレトから聞いた」
「へ〜青春してんな」
すごくムカついた。
けど俺は先生だから
葵と付き合えるわけもないし
きっと俺なんかよりもレトとの方がお似合いなんだよ
「だけど今日インスタ交換しようとしたらしてないって言われたらしい」
「あいつインスタやってんぞ?」
「要するに坂木はレトに興味無いんだよ、可哀想だよな」
すごく嬉しかった
レトに勝った気がした
「しかも話してる時ずっとお前のこと見てたって」
「は?」
なんだよそれ
「どうせキヨは好きなんだろ?」
「顔みたらお前が坂木のこと特別視してんのわかるぞ」
「してねぇ、し」
「何年の付き合いだと思ってんの?嘘ついても無駄だよ」
「俺やっぱ教師向いてねぇわ」
「俺は合ってると思うけどな?そこまで生徒に真剣に向き合えるのも、好きになれるのはキヨにしかできないと思うよ」
「うっしー」
「ん?」
「こんなに人を好きなったの初めてなんだよ
今さら引き返せないくらい、葵のことが好きなんだよ」
こうやって言葉に出してみたかった
誰かにこの気持ちを言いたかった。
立場なんて、忘れるくらい葵の笑った顔も、怒った顔も、全部、胸に焼きついてる。
「元カノが可哀想」
「あいつも好きだったけど、こんなにも守ってやりたいとか、楽しませてやりたいとか思うのは葵だけなんだよ」
「坂木と向き合いたいなら麻央としっかり折り合いつけた方がいいんじゃない?そっちが先だと思うけど?」
「やっぱりそうだよな、なぁなぁになってるから」
「お前優しすぎるんだよ」
「俺がキッパリ好きじゃないって言った方がいい?俺殺されない?」
「かすり傷くらいは付きそうだな」
「まじで手に負えないくらい暴走しそうで怖いんだよあいつ」
「そうさせたのはキヨだけどな」
「何も言えねぇ」
「依存させたかった訳じゃねぇけど、あの頃は俺、麻央に必要とされるのが嬉しかったんだよ」
「やりすぎだな、怒らないといけないとこはしっかりしないと、それが教師じゃないの?」
「もう教師やめてぇ職務放棄したい」
「寂しいだろ俺が」
「きも」
牛沢がふっと笑った
「けど坂木とも麻央ともちゃんと向き合わないと、後悔するぞ」
その言葉が、妙に胸に刺さった。
今までどうにかなると思って、避けてきたから麻央との関係がこうなってるんだ
葵とも
自分は先生で、立場があって、線を引かなきゃいけないのにそれができてなかった。
全部俺が悪い
「お前が正しいと思ったらそれが正解なんだよ」
「けど今何もかも正しいって思ってないだろ」
「なんで分かんだよ」
「俺ら友達だからな」
「なんかうぜぇー」
そう言いながらも、俺の口元には自然と笑顔が浮かんでいた。
久々に、少し前向きになれた気がした。
その夜、俺は珍しく長文のLINEを打った。
麻央にしっかり伝えるんだ。
これで関係は終わりにしたい。
ちゃんとした生徒と先生の関係に
俺が悪いこともしっかり伝えて。
《麻央、ごめん。
俺は、お前のことを好きになることはできない。
正直に言う。
手を繋ぐのも、抱きついてくるのも、こうしてLINEをするのも、もうやめよう。
麻央に必要とされるのが嬉しかった。
でも、それに甘えて、中途半端な関係にしてしまったのは俺の責任だ。
拒まなかったのも、ちゃんと止めなかったのも、俺だ。
だから、もし恨まれても仕方ないと思ってる。
本当にごめん。
でも、麻央には――俺なんかより、もっとちゃんと向き合ってくれる人が必ず現れる。
俺も、しっかり向き合いたい人がいるんだ。
だから今日でちゃんと、一線を引こう。》
送信ボタンを押したあと、しばらく画面を見つめたまま動けなかった。
既読はまだつかない。
携帯を伏せて目を閉じたその瞬間、
――バイブ音が鳴った。
「……麻央?」
画面には、麻央から返信がきた
《…わかってたよ。
いつかこうなるって。
でも言ってほしかった。
ちゃんと、正直に、最初から。
葵ちゃんが好きなんでしょ?
葵ちゃんを見るその優しい目、あたしには向けたことなかったよね。先生ってほんとずるいね
私これからどうしたらいいの?先生がいない人生なんて耐えられない
今までの全部、返してよ。許さないから。》
怖くてスマホを落としてしまった
俺殺されんのかな。
俺は返事を返さなかった
いや返す言葉が見つからなかった
明日からどうしたらいいんだよ
俺恨まれたわ
生霊の1人2人くらいつきそう
……まぁ俺が悪いんだけどな
清川先生side ___END___
麻央side____
先生から久しぶりにLINEが来たと思ったら
なにこれ。まじであり得ない
私から逃げられると思うなよ先生
これで終わらせたつもり?
勝手に全部“ごめん”で済ませた気?
ふざけんな
私がどれだけ、どれだけ先生のこと――
どんな顔見て、どんな声聞いて、どんな気持ちでいたと思ってんの?
向き合いたい人ってあの子のこと?
ほんと邪魔だな
葵ちゃんが全部悪いんだ
葵ちゃんが先生のことはぶらかして、こんな風にさせたんだ。じゃなきゃありえない。私がどれほどアピールしても好きになってくれなかったのに
私は、ずっとずっと――先生だけを見てきたのに。
私がどれだけ手を伸ばしてもダメだったのに。
たった4日間で…私はもう2年の付き合いなのに
どうして私じゃ、だめなの?
先生のことなんでもわかってるのに
先生っ
私の2年間。
私の全部。
私が伝えたこの気持ちも、全部返してよっ!!!
先生があたしを“切った”こと、
絶対に許さない。
麻央side _____END_____
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こーすけが作ってくれたご飯を食べながら
我にしっかり帰って考えてみた
答えなんて沢山あるけど心のモヤモヤに当てはまるのもなんてなかった。
1つ近いとしたら、あたしが先生のことを無意識の間に好きになってて、たけど先生を好きになるなんてありえないし、そんな自分が気持ち悪い
あと距離感が友達みたいに近い
きっとこれなんだろうな
でも、認めたくなかった
てかなんでこんなに悩んでんの?
それすらも嫌だ。もう全部嫌
勝手に拗ねて勝手に帰ってきてほんと何がしたかったんだろ
普段のあたしなら絶対こんな事しないのに…
気まずいし当分図書室は行かないでおこうかな
当番も藤井に任せよ。
先生に会ったらどんな顔したらいいんだよ…



