朝起きるとこーすけは満面の笑みでこっちを見ていた
「おはよこーすけぇなぁに…?」
「おっはよー!今日も可愛いなぁ」
「朝からそのノリだる」
「父さんまた出張いったぞ」
「いつもの事じゃん」
いつもの事だけど、昨日のことがあったおかげで心強い。もう母親もいないし
「とりあえず用意しろよもう8時だぞ」
「はっ!?なんで起こしてくんねぇんだよ!遅刻だよ!!」
「可愛い顔で寝てたから起こすにも起こせなかったんだよ」
「なんだよそれ!理由になってねぇよ!!」
「まぁ一緒に遅刻しよーぜ下で待ってるからな〜」
そう言ってこーすけは私の部屋から出ていった
てか、勝手に人の部屋入んなよ
「やっべ目腫れすぎだろ」
昨日泣きすぎたなぁ
もう母親の顔見なくて済むんだなって昨日の出来事をフラッシュバックしていた時
「ま、待って昨日先生と、手繋いだんだ」
いやいやいやあの時は暗くて怖かったからで
なんの意味もないんだよ
「何考えてんだよあたし」
そんな独り言を言って頬が熱くなるのを感じる。
用意をマッハで済ませてリビングに向かった
「なぁ目、腫れてね?」
「おたふくみたいな顔ってこと?」
「ぶっ飛ばすぞ」
「冗談だって全然わかんないし可愛いよ」
「聞いたあたしが馬鹿だったわ」
そんな会話をしながら家をでて学校に向かった
時刻は8時20分。家から学校まで徒歩10分
どう頑張っても一限開始の8時30分には間に合わない。遅刻がバレたら反省文書かされるんだったやべぇ〜
一限の先生誰だっけなその人にあたしの人生かかってんだが
「やばいやばい…反省文だ」
「お前ほんとギリギリで生きてるよな」
「うっさい!誰のせいで寝坊したと思ってんのよ!」
「俺の恋心がっ」
「殴るぞ勝手に恋すんな」
そうこう言ってる間に、校門が見えてくる。
時計を見たら、8時28分。
「ぎゃーもう無理終わったわ」
「もう走るしかねーぞ!ラストスパート!!」
こーすけと並んで校門を駆け抜ける。制服の裾がばっさばっさと揺れて、髪もめちゃくちゃだけど、そんなの構ってられない。その瞬間チャイムがなった。まじで急がないとやばい
教室のドアが見えてきた。
「じゃあなあお!」
「おう!」
こーすけは隣のクラス
まだ先生も来てないみたいで余裕らしい。
なんだよあいつ!!!!
あたしは滑り込むようにドアを開けた
膝に手を着いて息を整えた
「よっしゃセーーフ!」
「アウトだよ坂木」
「うわぁぁ!!びっくりしたぁ!」
先生が腰に手をおいてこっちを見てる
普通に怖いよやめてよ。
てか!今日一限先生か!!そっか昨日遅れんなよって言ってたか
「ちょ、無かったことにして!!!!」
クラスのみんながクスクス笑ってる
めっちゃ恥ずかしいんだけど
もう無理!!!
「葵遅せぇよ!!」
ナチが後ろの席からあたしを呼んだ
「ナチ!!もうナチ!!」
「しぬ顔赤っかじゃん」
「坂木早く席に着け」
「先生なんか今日冷たくねぇ?あたし怒らした?」
「そうか?いつもと一緒だけどな」
「坂木、お前もうちょい静かに遅刻しろな」
「……努力します」
いやそんなことより絶対機嫌悪いよ
「あとで職員室こいよ反省文あるから」
「はぁ…」
席に向かってる最中にクラスの子からヤジが飛ぶ
「よぉ遅刻プリンセス!」やら「遅刻界のヒロイン」
「うるせぇなお前ら」
……今日も平常運転で何よりだわ。
席に着くとナチが話しかけてきた
「どしたん最近遅刻なんかしてなかったのに」
「うーんこーすけが起こしてくんなかったんだよ」
「ん?なんでこーすけ?」
「あ、昨日色々あってお母さん出てった」
「えっ!!!!」
ナチが驚いて立ち上がり大声をあげた
クラスの子達がまたこっちをみてる
だけどもう今はそんなのどうでもいい
ナチは今にも泣きそうな顔をした
「今までよく頑張ったね良かったねもう耐えなくていいんだね」
あたしはナチと熱い抱擁を交わした
「お前ら朝からまじでうるせぇって」
先生がそう言う
やっぱりなんか怒ってるのかな?
朝だから機嫌わるいのかな?
本当は先生にも今すぐこの話をしたいのに
今日は距離を感じる
「すいませんっ」
「やっぱ今日先生機嫌わりいんだよな」
「何かあったのかな?」
「わかんね、寝不足とか?」
「あるかも」
「で、なんでそうなったの?」
「昨日こーすけがお母さんに殴られたんだよ、それで…」
一部始終をナチに話した
ナチは涙を流していた
こうやって友達のことで泣いてくれる友達はそう居ない。ほんとに大切にしようと思った。これまでもこれからもずっと。
「葵ほんとよく頑張ったなっ」
ナチが頭を撫でてくれる
その瞬間、昨日先生に頭に頭を撫でられたことを思い出した
この話をナチに話すのはまた今度にしよう
後ちょっとで一限が終わる
もう授業が終わったのかほぼ自由時間になってた
先生はさっきから女の子と楽しそうに話してる
先生がチラッとあたしを見た。
だけど、すぐ目を逸らした。
何故か辛い
勝手にあたしは先生の特別な生徒だと思ってた
てか好きでもないのこんな気持ちになんのキモすぎだろ
「あお…あおいーねぇあお!!」
「え!?なに?」
ナチがあたしを呼んでいた
「大丈夫?どっかいってたっしょ」
「いや、」
「香坂が呼んでるよあおに用があるんだとよ」
なんだよ用って、今それどころじゃねぇんだよ
そう思いながらも隣の席に座ってる玲斗くんに話しかけた
「えなに?玲斗くん」
「あ、葵インスタ交換しやん?」
「え、インスタ持ってない」
嘘をついた。ナチは隣で爆笑してる
なんで興味無いやつのインスタ交換しなきゃいけねぇんだよ
「ほんまかい!インスタやってないとか意外なんやけど」
「よく言われるあはは」
愛想笑いにも程がある
そう言いながら、あたしは机に突っ伏した。
ナチは腹を押さえて笑いをこらえてる。
笑い過ぎだろ
ナチからLINEがくる
「嘘つくなよ、まじおもろいって」
「まじで興味ねぇんだよ玲斗くんのインスタとか」
「でもさ、なんか前より話すようになったよね香坂くん」
「別に、普通にクラスの子だし」
「あおちん狙われてんじゃね?」
「なにがなんでもそれ恋愛脳すぎんだろ」
ナチに送信してからちょっとだけ目線をずらして、先生の方を見てしまう。
――まだ、笑ってる。
「何考えてんの?」
「うーん人生について」
「なんそれ葵にそんな考えれる脳あんの」
「舐めてるだろ」
「どうせキヨことなんだろうな」
「は?ありえねぇてかキヨって呼びなに」
「みんな気づいたらそう呼んでたよ牛沢先生始まりだったかな」
「へ〜」
「で、さっきから話してるあの子さキヨのこと好きらしいよ」
「センス悪っ」
「そんなこと言って葵も好きなくせに〜〜ずーっとキヨの事見てたのになぁ〜あおちんバレてんぞ〜」
「うるせぇ見てねぇわ!!」
「香坂と話してても見てたねぇ私見てたよ〜」
「ぶっ飛ばすぞ」
「あはははははは図星だ素直になりなよ恋する乙女ちゃん」
「放課後に先生と2人きりでゲーム?恋が生まれないわけないって〜」
「ナチいい加減にしろ」
そう話してるとチャイムがなった
「――はい、じゃあ今日はここまで」
先生がそう言って一限が終わった
先生と目が合う。こっち来いって目してる
だけど隣のクラスからナナとアリサが来た
ナナ「あおちん〜今日マック行かね?」
葵「行きたい。ナナなんか久しぶりに見た気すんだけど」
ナナ「だってあおちんずっと図書室いんだもん」
葵「そうか?ちょごめん先生と話しあるから行くわ」
アリサ 「え告白!?ついに?」
葵 「うっせぇんなわけねぇだろ好きじゃねぇわ」
ナチ 「あれは好きだろ絶対」
葵「うるせぇって」
アリサがニヤニヤしながら口元を手で隠してる。
ナチはあたしの肩をドンと押してきて、
「行ってらっしゃいませ〜〜先生との甘いひとときへ〜」
なんてクソみたいな茶番を始めやがった。
先生が廊下に出たのを追いかける
「先生っ」
「葵遅せぇよ行くぞ」
「ごめんごめん」
「先生なんか怒ってる?冷たいよ」
「すまん眠いのよ」
「何時に寝たん?」
「んー5時」
「は?何時起き?」
「7時、5時まで授業の準備してた」
「教師だりぃもう帰りてぇ」
「あたしのせいじゃんごめん」
「いや、ちげーって」
「てかそういえば親、大丈夫だった?それで遅れたとかない?」
「そうそうそう!言わないといけないことあったんだ」
先生に昨日の話をした
こーすけのことも母親のこともパパが帰ってきて助けてくれたことも
先生は隣で泣いてた
ごめんちょっとおもろくて笑うの耐えるのに必死
「やっと楽になれたなっおつかれさん」
「うわやべぇガチ泣きしてるわ俺恥ぃ」
「そんなに泣くと思わんかった怖」
「そら泣くだろ!!自分のこと見てぇに嬉しいわ」
先生は頭を撫でてくれた
こんなに落ち着くのはきっと先生だけなんだろうな
「てか反省文無しにしてくんね?まじで一生のお願い!担任にも言わないで」
「え〜じゃあ今日マリカで俺に10回勝ったらな」
「は?頭おかしいんじゃねぇの?」
「やらねーの?反省文3枚追加すっぞ」
そう話してると目の前から可愛い女の子が近ずいてきた
「わぁ!先生っ!!いた!!!」
この子この前先生に告白した…2年の麻央ちゃんだ
「おお!麻央じゃんどしたん」
「会いたかったよ〜」
そう言って先生の手をとって握った
あざとい系か結構この子怖い
やりよるこの女の子
ませすぎだろ
「やめろってそれほかの先生がみたら俺怒られんだって」
「誰も見てないよ〜」
あたし目の前にいるんだけど
めっちゃ見てますけど、あたし居ない設定なの?
気まずいって
先生ってモテるんだ…変な子から可哀想に
確かに背も高くて面白くて…まぁ優しくてうーんダメだそれ以外出てこない
何がいいんだよ
「先生だいすき」
「ありがとうな〜もうチャイム鳴るぞ」
「わぁ!ほんとだ帰るね!!」
麻央ちゃんは急いで帰っていった
先生は疲れたのかため息をついた
チャイムがなるまであと2分
「お前もそろそろ戻れよ」
「あんたが呼び出したんだろ」
「次なんの授業?俺なんもねぇけど」
「自習だからフリー」
「マリカすっか」
「教室なんだけど」
「使えねぇな」
「殺すぞ」
「はい訴えまーす」
「多分ナチ達が待ってから帰るな」
「え〜俺と遊ばねぇの?」
「遊びません」
「あおちんのばーか」
「なんだよ」
「教室まで送るわ」
「いや1人で帰れるし」
「迷ったら危ねぇだろ」
「迷わねぇよ」
「黙って俺に送られろよ」
「はいはい」
ほんとこの人、構ってほしいオーラ隠す気ないな。
教師のくせにかまちょ発動してんじゃねーよ。
でもまぁ悪い気はしないんだけどさ
さっきより近い距離で並んで歩いてる
今ナチ達がこれを見たら絶対なんか言うわ
でもこんな友達みたいな先生も悪くないなって思う
「なぁ俺らって親友って設定だよな?」
「まぁそうだねぇ?」
「なぁ親友さんよ今から真剣な話していい?」
「なんですか?」
「もし俺がただの近所の兄ちゃんだったら、お前俺の事好きになるか?」
何その質問きもっ!!!
「は?ならねーだろ気色悪っなに急に」
「即答すんなよ!!!!人の心あんのか!?」
「俺ずっと、前麻央のこと振ったのすっげーモヤモヤすんの」
「え、あの子は趣味悪いって怖いって」
「全然俺もタイプじゃねーよ可愛いけど疲れるし」
「んーきっと多分麻央ちゃんには先生だからかっこいい!!ってフィルターついてるよ、言いたいことわかるよね??」
「分からん分からん!聞きたくねぇし分かりたくねぇー」
「先生じゃなかったら!!全然好きにならない!!!!おめでとう!!」
「オーバーキルっすよ坂木さん」
「フィルター外したらただのうるせぇオッサンじゃん?」
「お、おっさん!?まだ言われた事ねぇわ!!」
「先生じゃなかったらただのゲーマーだろ先生」
「まぁそれはそうだな」
「ただのゲーマーにただの学生は興味ないって」
「うっ俺死にそう」
気づくともう教室の前だった
「じゃあ送ってくれてありがと」
「おう、放課後な」
あたしと先生はハイタッチして分かれた
教室に入るやいなやものすごい顔でこっちを見てるナチ達と目が合う
アリサ「うわぁ今の何!?」
葵「うるせぇてかなんでアリとナナいんだよ」
ナナ「今日から水泳始まったんだけどダルすぎてサボったあはは」
ナチ 「うちらも来週から水泳だよ〜だりぃ」
葵「それ絶対参加?」
ナナ 「当たり前だろ」
葵 「だるすぎだろまだ4月だってのに凍えて死ぬわ」
ナチ「なんか3年だけ早く始まるらしいわ」
アリサ 「卒業したくねぇ」
ナチ 「あおちん恋愛できるうちにしとくんだよ」
葵 「好きな人いねぇのにどうやってすんだよ」
ナチ ナナ アリ 「清川」
葵 「お前らだるっ」
アリサ 「お似合いだけどなぁ」
ナナ「何が嫌なん」
葵 「先生と付き合うとかなしだろ犯罪だし」
ナチ 「でも先輩で卒業後に付き合った人もいんだよ噂だけど」
葵「へ〜でもあいつとはないわ友達としてしか見れねぇもん」
ナナ「そんなこと言っちゃってぇ」
ナチ 「どうせ今日も図書室でマリカすんだろ?」
葵 「どうせってなんだよするけどさ」
アリサ 「お熱いことで」
ナナ 「またマックこねーの?」
葵 「あ、」
ナチ 「忘れてたな」
葵「すんません今度奢りますから!!」
アリサ「それ絶対な~?」
ナチ「いや、絶対じゃないと許さねぇ」
ナナ「マックじゃなくてもいいよ、スタバでも焼肉でも」
葵「高望みすな!!金がねぇよ金が」
牛沢「おいおいなんでここにいんだよ〜プール行くぞ」
体育の先生が走ってきた
ナナ「げ!うっしーじゃん!」
アリサ 「なんでここわかったんだよ〜」
ナナ「ねうっしーあたしら今日水着わすれた」
牛沢「え〜貸出今日ないよ?見学だな」
アリサ 「行くかナナ」
ナナ 「そうだね迎えにきたもんな」
牛沢「ごめんなぁ」
葵 「ばいばーい」
ナチ 「日焼け止め濡れよー」
颯爽と2人は出ていった
「うっしーってほんと憎めないよな」
「優しいの滲みでてんもん」
「あんな優しい人と付き合うんだよあお」
「うっしーみたいな人そう探してもいねぇよ」
「そうだよなほんとそうだ」
ナチが遠くを見てそう言った
ナチも大毅色々あるんだな
「最近大毅とはどうなの」
「最近ねぇ、ラブラブっすよ幸せすぎて死にそう」
「なんだこいつ心配したのが馬鹿だったわ」
「あはははだけど大毅はみんなに優しいからなぁ」
「まだそんなことしてんの?何?モテに行ってんの?」
「自覚なしなんだよそれが」
「ま、でもそういうとこも含めて好きなんだけどね」
「……バカだなぁ」
あたしはそう呟いたけど、たぶんそれって悪口じゃなくて、ちょっと羨ましさ混じりだった。
「でもさ、ナチが幸せそうで安心したわ。前みたいに無理して笑ってた時期もあったし」
「……あの時はマジできつかったわ。けど、今は違う。あたし、ちゃんと大毅に甘えられるようになったもん」
「ナチが甘えるとか想像つかねぇけどな」
「うっさいな~。でもさ、なんだかんだで、恋愛っていいなって思えるようになったのは、葵のおかげでもあるんだよ?」
「は?なんであたし?」
「だってさ、最近すげぇ自然に先生の話するようになったじゃん。あんたもなんだかんだ成長したってこと」
「うるせぇなぁ……ってか先生の話ばっかしてたっけ?」
「無自覚が一番タチ悪いってマジで」
「やめろ〜〜〜!!」
あたしはナチの腕をバシバシ叩いた。ナチはゲラゲラ笑いながら逃げる。
そんなこと言いながらも、また先生との時間を思い出す。
ナチはそんなあたしの顔をじーっと見てから、ニヤッと笑った。
「正直好きなんでしょ?」
「好きじゃないってば」
「じゃあ、もし先生が教師じゃなかったら?」
それさっき先生も言ってたな
「ないです」
「即答すぎだろ」
こうやってナチと笑い会えるのもあと何回なんだろう
今まで助けて貰ったぶんのお返しは、何で返していけばいいんだろう。
きっとあたしが幸せに、楽しくしてるのがお返しなんだろうな。何よりもあたしはナチ達が好きだ
放課後
「おはよこーすけぇなぁに…?」
「おっはよー!今日も可愛いなぁ」
「朝からそのノリだる」
「父さんまた出張いったぞ」
「いつもの事じゃん」
いつもの事だけど、昨日のことがあったおかげで心強い。もう母親もいないし
「とりあえず用意しろよもう8時だぞ」
「はっ!?なんで起こしてくんねぇんだよ!遅刻だよ!!」
「可愛い顔で寝てたから起こすにも起こせなかったんだよ」
「なんだよそれ!理由になってねぇよ!!」
「まぁ一緒に遅刻しよーぜ下で待ってるからな〜」
そう言ってこーすけは私の部屋から出ていった
てか、勝手に人の部屋入んなよ
「やっべ目腫れすぎだろ」
昨日泣きすぎたなぁ
もう母親の顔見なくて済むんだなって昨日の出来事をフラッシュバックしていた時
「ま、待って昨日先生と、手繋いだんだ」
いやいやいやあの時は暗くて怖かったからで
なんの意味もないんだよ
「何考えてんだよあたし」
そんな独り言を言って頬が熱くなるのを感じる。
用意をマッハで済ませてリビングに向かった
「なぁ目、腫れてね?」
「おたふくみたいな顔ってこと?」
「ぶっ飛ばすぞ」
「冗談だって全然わかんないし可愛いよ」
「聞いたあたしが馬鹿だったわ」
そんな会話をしながら家をでて学校に向かった
時刻は8時20分。家から学校まで徒歩10分
どう頑張っても一限開始の8時30分には間に合わない。遅刻がバレたら反省文書かされるんだったやべぇ〜
一限の先生誰だっけなその人にあたしの人生かかってんだが
「やばいやばい…反省文だ」
「お前ほんとギリギリで生きてるよな」
「うっさい!誰のせいで寝坊したと思ってんのよ!」
「俺の恋心がっ」
「殴るぞ勝手に恋すんな」
そうこう言ってる間に、校門が見えてくる。
時計を見たら、8時28分。
「ぎゃーもう無理終わったわ」
「もう走るしかねーぞ!ラストスパート!!」
こーすけと並んで校門を駆け抜ける。制服の裾がばっさばっさと揺れて、髪もめちゃくちゃだけど、そんなの構ってられない。その瞬間チャイムがなった。まじで急がないとやばい
教室のドアが見えてきた。
「じゃあなあお!」
「おう!」
こーすけは隣のクラス
まだ先生も来てないみたいで余裕らしい。
なんだよあいつ!!!!
あたしは滑り込むようにドアを開けた
膝に手を着いて息を整えた
「よっしゃセーーフ!」
「アウトだよ坂木」
「うわぁぁ!!びっくりしたぁ!」
先生が腰に手をおいてこっちを見てる
普通に怖いよやめてよ。
てか!今日一限先生か!!そっか昨日遅れんなよって言ってたか
「ちょ、無かったことにして!!!!」
クラスのみんながクスクス笑ってる
めっちゃ恥ずかしいんだけど
もう無理!!!
「葵遅せぇよ!!」
ナチが後ろの席からあたしを呼んだ
「ナチ!!もうナチ!!」
「しぬ顔赤っかじゃん」
「坂木早く席に着け」
「先生なんか今日冷たくねぇ?あたし怒らした?」
「そうか?いつもと一緒だけどな」
「坂木、お前もうちょい静かに遅刻しろな」
「……努力します」
いやそんなことより絶対機嫌悪いよ
「あとで職員室こいよ反省文あるから」
「はぁ…」
席に向かってる最中にクラスの子からヤジが飛ぶ
「よぉ遅刻プリンセス!」やら「遅刻界のヒロイン」
「うるせぇなお前ら」
……今日も平常運転で何よりだわ。
席に着くとナチが話しかけてきた
「どしたん最近遅刻なんかしてなかったのに」
「うーんこーすけが起こしてくんなかったんだよ」
「ん?なんでこーすけ?」
「あ、昨日色々あってお母さん出てった」
「えっ!!!!」
ナチが驚いて立ち上がり大声をあげた
クラスの子達がまたこっちをみてる
だけどもう今はそんなのどうでもいい
ナチは今にも泣きそうな顔をした
「今までよく頑張ったね良かったねもう耐えなくていいんだね」
あたしはナチと熱い抱擁を交わした
「お前ら朝からまじでうるせぇって」
先生がそう言う
やっぱりなんか怒ってるのかな?
朝だから機嫌わるいのかな?
本当は先生にも今すぐこの話をしたいのに
今日は距離を感じる
「すいませんっ」
「やっぱ今日先生機嫌わりいんだよな」
「何かあったのかな?」
「わかんね、寝不足とか?」
「あるかも」
「で、なんでそうなったの?」
「昨日こーすけがお母さんに殴られたんだよ、それで…」
一部始終をナチに話した
ナチは涙を流していた
こうやって友達のことで泣いてくれる友達はそう居ない。ほんとに大切にしようと思った。これまでもこれからもずっと。
「葵ほんとよく頑張ったなっ」
ナチが頭を撫でてくれる
その瞬間、昨日先生に頭に頭を撫でられたことを思い出した
この話をナチに話すのはまた今度にしよう
後ちょっとで一限が終わる
もう授業が終わったのかほぼ自由時間になってた
先生はさっきから女の子と楽しそうに話してる
先生がチラッとあたしを見た。
だけど、すぐ目を逸らした。
何故か辛い
勝手にあたしは先生の特別な生徒だと思ってた
てか好きでもないのこんな気持ちになんのキモすぎだろ
「あお…あおいーねぇあお!!」
「え!?なに?」
ナチがあたしを呼んでいた
「大丈夫?どっかいってたっしょ」
「いや、」
「香坂が呼んでるよあおに用があるんだとよ」
なんだよ用って、今それどころじゃねぇんだよ
そう思いながらも隣の席に座ってる玲斗くんに話しかけた
「えなに?玲斗くん」
「あ、葵インスタ交換しやん?」
「え、インスタ持ってない」
嘘をついた。ナチは隣で爆笑してる
なんで興味無いやつのインスタ交換しなきゃいけねぇんだよ
「ほんまかい!インスタやってないとか意外なんやけど」
「よく言われるあはは」
愛想笑いにも程がある
そう言いながら、あたしは机に突っ伏した。
ナチは腹を押さえて笑いをこらえてる。
笑い過ぎだろ
ナチからLINEがくる
「嘘つくなよ、まじおもろいって」
「まじで興味ねぇんだよ玲斗くんのインスタとか」
「でもさ、なんか前より話すようになったよね香坂くん」
「別に、普通にクラスの子だし」
「あおちん狙われてんじゃね?」
「なにがなんでもそれ恋愛脳すぎんだろ」
ナチに送信してからちょっとだけ目線をずらして、先生の方を見てしまう。
――まだ、笑ってる。
「何考えてんの?」
「うーん人生について」
「なんそれ葵にそんな考えれる脳あんの」
「舐めてるだろ」
「どうせキヨことなんだろうな」
「は?ありえねぇてかキヨって呼びなに」
「みんな気づいたらそう呼んでたよ牛沢先生始まりだったかな」
「へ〜」
「で、さっきから話してるあの子さキヨのこと好きらしいよ」
「センス悪っ」
「そんなこと言って葵も好きなくせに〜〜ずーっとキヨの事見てたのになぁ〜あおちんバレてんぞ〜」
「うるせぇ見てねぇわ!!」
「香坂と話してても見てたねぇ私見てたよ〜」
「ぶっ飛ばすぞ」
「あはははははは図星だ素直になりなよ恋する乙女ちゃん」
「放課後に先生と2人きりでゲーム?恋が生まれないわけないって〜」
「ナチいい加減にしろ」
そう話してるとチャイムがなった
「――はい、じゃあ今日はここまで」
先生がそう言って一限が終わった
先生と目が合う。こっち来いって目してる
だけど隣のクラスからナナとアリサが来た
ナナ「あおちん〜今日マック行かね?」
葵「行きたい。ナナなんか久しぶりに見た気すんだけど」
ナナ「だってあおちんずっと図書室いんだもん」
葵「そうか?ちょごめん先生と話しあるから行くわ」
アリサ 「え告白!?ついに?」
葵 「うっせぇんなわけねぇだろ好きじゃねぇわ」
ナチ 「あれは好きだろ絶対」
葵「うるせぇって」
アリサがニヤニヤしながら口元を手で隠してる。
ナチはあたしの肩をドンと押してきて、
「行ってらっしゃいませ〜〜先生との甘いひとときへ〜」
なんてクソみたいな茶番を始めやがった。
先生が廊下に出たのを追いかける
「先生っ」
「葵遅せぇよ行くぞ」
「ごめんごめん」
「先生なんか怒ってる?冷たいよ」
「すまん眠いのよ」
「何時に寝たん?」
「んー5時」
「は?何時起き?」
「7時、5時まで授業の準備してた」
「教師だりぃもう帰りてぇ」
「あたしのせいじゃんごめん」
「いや、ちげーって」
「てかそういえば親、大丈夫だった?それで遅れたとかない?」
「そうそうそう!言わないといけないことあったんだ」
先生に昨日の話をした
こーすけのことも母親のこともパパが帰ってきて助けてくれたことも
先生は隣で泣いてた
ごめんちょっとおもろくて笑うの耐えるのに必死
「やっと楽になれたなっおつかれさん」
「うわやべぇガチ泣きしてるわ俺恥ぃ」
「そんなに泣くと思わんかった怖」
「そら泣くだろ!!自分のこと見てぇに嬉しいわ」
先生は頭を撫でてくれた
こんなに落ち着くのはきっと先生だけなんだろうな
「てか反省文無しにしてくんね?まじで一生のお願い!担任にも言わないで」
「え〜じゃあ今日マリカで俺に10回勝ったらな」
「は?頭おかしいんじゃねぇの?」
「やらねーの?反省文3枚追加すっぞ」
そう話してると目の前から可愛い女の子が近ずいてきた
「わぁ!先生っ!!いた!!!」
この子この前先生に告白した…2年の麻央ちゃんだ
「おお!麻央じゃんどしたん」
「会いたかったよ〜」
そう言って先生の手をとって握った
あざとい系か結構この子怖い
やりよるこの女の子
ませすぎだろ
「やめろってそれほかの先生がみたら俺怒られんだって」
「誰も見てないよ〜」
あたし目の前にいるんだけど
めっちゃ見てますけど、あたし居ない設定なの?
気まずいって
先生ってモテるんだ…変な子から可哀想に
確かに背も高くて面白くて…まぁ優しくてうーんダメだそれ以外出てこない
何がいいんだよ
「先生だいすき」
「ありがとうな〜もうチャイム鳴るぞ」
「わぁ!ほんとだ帰るね!!」
麻央ちゃんは急いで帰っていった
先生は疲れたのかため息をついた
チャイムがなるまであと2分
「お前もそろそろ戻れよ」
「あんたが呼び出したんだろ」
「次なんの授業?俺なんもねぇけど」
「自習だからフリー」
「マリカすっか」
「教室なんだけど」
「使えねぇな」
「殺すぞ」
「はい訴えまーす」
「多分ナチ達が待ってから帰るな」
「え〜俺と遊ばねぇの?」
「遊びません」
「あおちんのばーか」
「なんだよ」
「教室まで送るわ」
「いや1人で帰れるし」
「迷ったら危ねぇだろ」
「迷わねぇよ」
「黙って俺に送られろよ」
「はいはい」
ほんとこの人、構ってほしいオーラ隠す気ないな。
教師のくせにかまちょ発動してんじゃねーよ。
でもまぁ悪い気はしないんだけどさ
さっきより近い距離で並んで歩いてる
今ナチ達がこれを見たら絶対なんか言うわ
でもこんな友達みたいな先生も悪くないなって思う
「なぁ俺らって親友って設定だよな?」
「まぁそうだねぇ?」
「なぁ親友さんよ今から真剣な話していい?」
「なんですか?」
「もし俺がただの近所の兄ちゃんだったら、お前俺の事好きになるか?」
何その質問きもっ!!!
「は?ならねーだろ気色悪っなに急に」
「即答すんなよ!!!!人の心あんのか!?」
「俺ずっと、前麻央のこと振ったのすっげーモヤモヤすんの」
「え、あの子は趣味悪いって怖いって」
「全然俺もタイプじゃねーよ可愛いけど疲れるし」
「んーきっと多分麻央ちゃんには先生だからかっこいい!!ってフィルターついてるよ、言いたいことわかるよね??」
「分からん分からん!聞きたくねぇし分かりたくねぇー」
「先生じゃなかったら!!全然好きにならない!!!!おめでとう!!」
「オーバーキルっすよ坂木さん」
「フィルター外したらただのうるせぇオッサンじゃん?」
「お、おっさん!?まだ言われた事ねぇわ!!」
「先生じゃなかったらただのゲーマーだろ先生」
「まぁそれはそうだな」
「ただのゲーマーにただの学生は興味ないって」
「うっ俺死にそう」
気づくともう教室の前だった
「じゃあ送ってくれてありがと」
「おう、放課後な」
あたしと先生はハイタッチして分かれた
教室に入るやいなやものすごい顔でこっちを見てるナチ達と目が合う
アリサ「うわぁ今の何!?」
葵「うるせぇてかなんでアリとナナいんだよ」
ナナ「今日から水泳始まったんだけどダルすぎてサボったあはは」
ナチ 「うちらも来週から水泳だよ〜だりぃ」
葵「それ絶対参加?」
ナナ 「当たり前だろ」
葵 「だるすぎだろまだ4月だってのに凍えて死ぬわ」
ナチ「なんか3年だけ早く始まるらしいわ」
アリサ 「卒業したくねぇ」
ナチ 「あおちん恋愛できるうちにしとくんだよ」
葵 「好きな人いねぇのにどうやってすんだよ」
ナチ ナナ アリ 「清川」
葵 「お前らだるっ」
アリサ 「お似合いだけどなぁ」
ナナ「何が嫌なん」
葵 「先生と付き合うとかなしだろ犯罪だし」
ナチ 「でも先輩で卒業後に付き合った人もいんだよ噂だけど」
葵「へ〜でもあいつとはないわ友達としてしか見れねぇもん」
ナナ「そんなこと言っちゃってぇ」
ナチ 「どうせ今日も図書室でマリカすんだろ?」
葵 「どうせってなんだよするけどさ」
アリサ 「お熱いことで」
ナナ 「またマックこねーの?」
葵 「あ、」
ナチ 「忘れてたな」
葵「すんません今度奢りますから!!」
アリサ「それ絶対な~?」
ナチ「いや、絶対じゃないと許さねぇ」
ナナ「マックじゃなくてもいいよ、スタバでも焼肉でも」
葵「高望みすな!!金がねぇよ金が」
牛沢「おいおいなんでここにいんだよ〜プール行くぞ」
体育の先生が走ってきた
ナナ「げ!うっしーじゃん!」
アリサ 「なんでここわかったんだよ〜」
ナナ「ねうっしーあたしら今日水着わすれた」
牛沢「え〜貸出今日ないよ?見学だな」
アリサ 「行くかナナ」
ナナ 「そうだね迎えにきたもんな」
牛沢「ごめんなぁ」
葵 「ばいばーい」
ナチ 「日焼け止め濡れよー」
颯爽と2人は出ていった
「うっしーってほんと憎めないよな」
「優しいの滲みでてんもん」
「あんな優しい人と付き合うんだよあお」
「うっしーみたいな人そう探してもいねぇよ」
「そうだよなほんとそうだ」
ナチが遠くを見てそう言った
ナチも大毅色々あるんだな
「最近大毅とはどうなの」
「最近ねぇ、ラブラブっすよ幸せすぎて死にそう」
「なんだこいつ心配したのが馬鹿だったわ」
「あはははだけど大毅はみんなに優しいからなぁ」
「まだそんなことしてんの?何?モテに行ってんの?」
「自覚なしなんだよそれが」
「ま、でもそういうとこも含めて好きなんだけどね」
「……バカだなぁ」
あたしはそう呟いたけど、たぶんそれって悪口じゃなくて、ちょっと羨ましさ混じりだった。
「でもさ、ナチが幸せそうで安心したわ。前みたいに無理して笑ってた時期もあったし」
「……あの時はマジできつかったわ。けど、今は違う。あたし、ちゃんと大毅に甘えられるようになったもん」
「ナチが甘えるとか想像つかねぇけどな」
「うっさいな~。でもさ、なんだかんだで、恋愛っていいなって思えるようになったのは、葵のおかげでもあるんだよ?」
「は?なんであたし?」
「だってさ、最近すげぇ自然に先生の話するようになったじゃん。あんたもなんだかんだ成長したってこと」
「うるせぇなぁ……ってか先生の話ばっかしてたっけ?」
「無自覚が一番タチ悪いってマジで」
「やめろ〜〜〜!!」
あたしはナチの腕をバシバシ叩いた。ナチはゲラゲラ笑いながら逃げる。
そんなこと言いながらも、また先生との時間を思い出す。
ナチはそんなあたしの顔をじーっと見てから、ニヤッと笑った。
「正直好きなんでしょ?」
「好きじゃないってば」
「じゃあ、もし先生が教師じゃなかったら?」
それさっき先生も言ってたな
「ないです」
「即答すぎだろ」
こうやってナチと笑い会えるのもあと何回なんだろう
今まで助けて貰ったぶんのお返しは、何で返していけばいいんだろう。
きっとあたしが幸せに、楽しくしてるのがお返しなんだろうな。何よりもあたしはナチ達が好きだ
放課後



