一番星は君ひとりだけ



才菜が退院してしばらく。
才菜がまた変な気を起こさないように、仕事を休んでいた。

そして、何度も何度も、プロポーズした。

何度も何度も断られた。

気付いたら、一緒に住み始めてから半年が経っていた。


「次プロポーズ断られたら、潔く諦める。だから、断る本当の理由教えて」

「…人気アイドルだから」

「それだけ?」

「…私は、デビュー前から追いかけてきたんだよ。それだけ、じゃない。下積みから頑張ってきたの、知ってるからこそ、人気出て活躍してる今、私なんかと結婚してせっかくの仕事とか減ったら、1人のファンとして悲しいから」

「私なんか、じゃないよ」

「…私、同担拒否なんかしないと思ってた」

「ん?」

「テレビ観てて、女性タレントとかと絡んでるの見たり、他のファンが歌番組でキャーキャー言って観覧してるの見て、嫉妬しちゃった。毎日毎日顔見てるのに」

「うん?うん」

「それ見るのが嫌で、テレビ観なくなったし、過去のも観なくなった。…気付いちゃったんだよね。この好きって、恋愛だって」

「そっか」

「苦しくなった。結婚して一緒にいたいっていう恋してる私と、人気あるうちは活躍しててほしいっていうファンの私とで挟まれて。それで、あんなことした」

「うん、分かった」


才菜が初めて、自分の気持ちを赤裸々に話してくれたのが嬉しかった。抱き締めた。


「それを踏まえてだけど…どうしたい?」

「一緒にいたい…!」

「それは、俺にとって、結婚と同義になるけどいい?」

「…なんで、結婚にこだわるの?」

「結婚してないと、支えきれない、守りきれないことだってあるよ。俺言ったでしょ。才菜のこと守るって。約束果たさせて」

「…わかった、結婚しよ?」

「うん、結婚しよ」


強く抱き締めた。