「じゃあ、気が変わったら連絡してよ」
「変わらねーよ」
嵐が去って行く。
翌日。手を握っていると、才菜が目を覚ます。
「あっ!才菜?!」
「ここは…?」
「病院だよ」
「…死に損なった」
「え?」
聞き取れてしまった。才菜は…本気で考えていたのか。
「俺と一緒に生きるの、嫌?」
「…生きること、自体」
「ん?」
「それ自体が…嫌なんだよ」
「それだけ追い詰められてたの、気付いてあげられなくてごめん」
才菜は首を振った。
それから数日経って、双子の妹に着けられた指輪は質屋に出して、新しく婚約指輪を購入しに行った。
そして、才菜の元へ。
「才菜。起きてた?」
彼女は頷く。
後遺症のせいか、ぼんやりしている。
「渡したい物がある」
婚約指輪をカパッと開けて見せる。
「俺と結婚してください」
「…そういうとこだよ」
「へ」
訳が分からなかった。
「…いいよって、言えない」
「どうして?」
「…どうしても」
「俺のこと、推しとしてしか見れない?」
「そういうことじゃなくて」
「推しとしても見てない?今まで、名前呼んでくれたことすらないし」
「…」
「いい、またチャレンジする」
そう簡単に諦めるような男じゃない。
そんなんじゃ、ここまでアイドルとして上り詰めてこなかった。



