まず家族の話は一切してくれなかったから知らない。
「姉がいつもお世話になってますー!きゃはは!」
何が面白いのかよく分からないけど。
「ねえ飛貴くんさぁ、あたしと結婚しようよ!」
「は…?」
全力の、は…?が出た。
「テレビとかだと明るい元気キャラなのに、プライベートだとそんな感じ?へー」
「いや…」
「ねえ、それって才菜に渡そうとしてた婚約指輪でしょ?」
そう言って、彼女はベッド脇の机に置いていた婚約指輪のケースを手に取る。
「おいやめろって、触るなっ」
取り返そうとしたが、さっと翻し、彼女は自分の左薬指にはめていた。
うわ最悪…。
「きゃはは!最高!!才菜の彼氏奪っちゃった!!」
「ふざけんなよ」
そう言って立ち上がると、俺の前に立ち、座らせて俺の膝に座ってくる。
「おいやめ」
キスされて何も話せなくなる。
「っぱぁ、何すんだよ」
「満更でもないくせに。才菜なんてつまんないめんどくさい女なんか捨てればいいのに」
「そんなこと言うなよ!」
「それにほら」
と、俺の手を取って、胸を触らせてくる。
「才菜と違って、胸もあるし?営み楽しませてあげるよ」
「やめろ」
手を振り解いた。膝に乗られては、動こうにも動けない。
「指輪返せよ」
「はいはい、返しますよ」
そう言って、彼女は床にポイと投げ捨てる。
「…あんたに着けられた物を渡すわけにいかないから、もういいよ」
質屋にでも出そ…。



