一番星は君ひとりだけ



こっちは向いてくれてるけど、ムスッとしてる。

そんな関係が1ヶ月ほど続いた。

グループホームから物は全部持ってきて、同棲カップルのようになった。

ただ依然として才菜は、俺に対して好きなのか何なのか分からない態度を取り続けるし、うつ症状が続いている。


ある日のこと。

いつも通りだと思っていた。

雑誌の撮影が終わり、帰ってくると才菜は珍しくすやすや眠っていた。いつもなら横にはなっていても、意識はある状態。


「才菜ー。起きないとぎゅーするぞー」


あれ、ほんとに起きない。

ぎゅーしてみる。一か八か。

優しく、才菜のことを抱き締めてみた。
すると、少し動いて抱き締め返してくれた。


「え?才菜?寝ぼけてる?」


その日の夜。試しに腕枕をしようと腕を伸ばしてみた。
するとどうだ、擦り寄ってくる。俺の胴体にぴたっと身体をくっつけて目を瞑る。

ああ夢かな。現実であってくれ。幸運なことに、現実なんだな。


「才菜どうしたの?今日は甘々だね」


何も答えてくれないけど、それはいいや。

ただそれと同時期に、異変も感じ始めた。
一緒に住み始めた頃は、俺の出てる番組は完全ロックオンで絶対観ていたし、録画もしていたのに、最近は観てる様子がない。BluRayもどこかにしまい込んでしまったらしい。

悲しいな、アイドルとして。飽きられたのかな。