一番星は君ひとりだけ


俺は急いで寝室に向かう。


「才菜!」


いない。布団をめくる。いない。

トイレ?ドアを開ける。いない。

スマホを鳴らしてみるか。…あ、そういや連絡先、交換してない。それに、そういえばベッドの縁に才菜のスマホが置いてあった。

だとしたらなんで鍵閉まってたんだ?

玄関に戻ると、置いてあるはずの合鍵が無くなっている。あれ使って、閉めて出て行った…あるいは誰かに入られた…?

散々、才菜のこと守るって言った人間が、早速守れてないじゃないか。

気付いたら俺は走り出していた。


「才菜!」


思い当たる所なんてない。関係値なんて無いに等しいんだから。当てずっぽうに捜して行くしかない。


「才菜!才菜?」


どこ行ったんだよ…才菜!

息を切らしていると、不意に公園のベンチに座る、寂しそうな背中が目に入る。


「才菜…!」


俺の声に気付くと、振り向いて泣きそうな顔をした才菜がいた。

走り寄って、横に座ると、わぁわぁ泣き出してしまった。


「どうしたの?1人で出かけたら危ないよ」

「私の居場所なんてどこにもないの」

「えっ…?」

「どこ行ったって迷惑かけるだけだし、私なんか生まれてこなきゃ良かった」

「そんなことないよ、お家帰ろ」

「帰らない、どこにも帰らない」