「?」
「う、あ、あの、傘ないんですか……?」
「ああ、朝忙しかったから。雪やむまで待とうかなって」
「……っ、どうぞ!」
「え」
私は持っていたビニール傘を差し出した。
傘マーカーの、水色の花がチラチラと揺れる。
「嫌でなければ、使ってください」
「え、悪いよ。それに君は」
「私はもう一つあるので大丈夫です!」
「あ……、ありがと」
驚きつつも受け取ってもらえたのを確認して、私は折りたたみ傘を開いた。
念のため持ち歩いていてよかった……。
そしてまだ傘を開かずに首を傾げている彼を振り返る。
まだ遠慮しているのかなぁ。
そう思ったら、なんだか笑みがこぼれて。
「……ふふっ、メリークリスマス、です」
思わず笑いかけると、彼は少し目を見開いた。
歩き出して、ふぅ、と白い息を吐いて私は手を胸に当てる。
鼓動が速くなっている。
そう、これは。
一目惚れだった──。



