「!……女の子に声かけられてる」
「瑠亜もアピールすればいいのに〜」
「それはむりっ!
推しは眺めているだけで充分だもん」
黒髪のポニーテールを揺らして茶化してきた涼香に唇を尖らせる。
私の推し、高峰琳斗くんは男女ともに人気な隣のクラスの男の子。
頭がいいのはもちろん、男子バレーボール部の期待のエースで。
少し色素が薄く、日光に当たるとさらに薄茶色に見えるサラサラの髪はいつもセンターパートで。
切れ長の目に整った鼻筋と唇、優しい声と180cmくらいの高身長は女子からのモテ要素をぎっしり詰め込んでいる。
まるで漫画か何かのヒーローそのまんま。
運動神経よし、学力よし、ビジュアルもよしの三拍子。
あまりの綺麗さに、ほとんどの女子が『推し』として高峰くんを崇めている。
推しとは、恋愛対象とは違って見るだけで幸せになれる。簡単に言えば観賞対象のこと。
でも私がそんな彼を推し始めたのには、あるきっかけがあって──。



