分かってない。
高峰くんは分かってないよ。
私がどんなに高峰くんを見つめているのか。
私がどんなに高峰くんに憧れているのか。
「秀馬くんの方が、好きになれるよ……」
「は、」
「私は、高峰くんは好きになれないの……!きゃっ」
言い切った後、急に腕を引かれて。
気づけば高峰くんの体にすっぽりと収まっていた。
感触と体温を感じて、私はとりあえず固まる。
だだだだ、抱きしめられてる⁉︎
やばいやばいやばいやばい(2回目)!
「……そんなの、許さねー」
「……?」
すごく小さい声で言っていたから、聞き取れなかった。
でも声が少し苦しげだったような。
するとゆっくりと体が離され、向き合った。
「大丈夫、俺が絶対に好きにさせるから。安心して」
いや安心できる要素どっか行ってるよ⁉︎
「じゃ、帰ろ。家まで送るね」
私は内心ムスッとしながら、推しと肩を並べて歩き出した。



