【琳斗 side】
好きだ、と思った。
その子の笑顔に、一瞬で何もかも奪われた。
俺は幼少期の頃から周りからのプレッシャーを感じて生きていた。
勉強も運動もなんでもそつなくこなせたから、もっと上を目指せと言われ続けた。
母や父に甘えるのは物心ついた時からできなくなっていた。
誰も彼もみな、俺のことを道具としか思っていない。
都合よく回せる駒。思うように設計できるロボット。
だから俺もそれが使命なのだと思っていた。
中学生くらいになれば、気づけば周りは女子がたかっていた。
猫撫で声で名前を呼ばれて。ベタベタ触られて。
気持ち悪いけど、我慢することには慣れっこだ。
だから俺は告白などは全て断りながらも、作った笑顔とキャラを貼り続けた。
高校生になってもそれは続いて。
青春とか、俺の毎日にはそんなものなくて。
愛とか恋とか、そんなものはできないと思っていた。
なんのために生きているのか。
そうも思うほどに。



