頭を下げる。
長い沈黙があり。
すぅっと、息を吸う音がした。
「……傘、ないの?」
「へ……?」
「ほら」
降り止まない雪の中、唐突に片手をこちらに向けた高峰くん。
私は脳裏に、あの日のシーンが蘇った。
──『う、あ、あの、傘ないんですか……?』
『……っ、どうぞ!』──
私は困惑しながら傘に入った。
「……きゃっ⁉︎」
たちまち片手で抱き寄せられ。
フワリと香ったのは、久しぶりの……
高峰くんの匂い。
「……俺も、好きだよ。嫌いになったことなんてない。
やっと……恋愛対象になれたんだ」
少し掠れた、苦しげな声。
その中には同じくらい、愛しさも込められていた。
「メリークリスマス、瑠亜」
──『……ふふっ、メリークリスマス、です』
あぁ、私たちは。
あの時からずっと、つながっていたんだね。
ボロボロ、と涙が次から次へと流れてくる。
彼は眉を下げて笑いながら私の涙を拭い。
雪景色に差した傘の中、唇が重なった──。



