呼び止められたかと思うと、急に抱きすくめられる。
私は驚いて固まった。



「瑠亜……俺な、本当はまだ瑠亜のこと好きだ」

「……うん」

「そりゃ行かせたくねーよ、アイツのところに。……でも」



体を離し、向き合う。



「瑠亜は本当に、アイツといる時が一番楽しそうだ」



ぐしゃりと顔を歪めてそんなことを言う。



「いつも思ってた。瑠亜をあんな笑顔にさせるのは俺だけでいいって……だけど、決めた」

「……」

「幸せになれ、瑠亜。俺はそれだけを願う」



私は苦しさに唇を噛む。

なんで神様はこんなに意地悪なんだろう。
どうしてみんながみんな幸せになれないの……?



「秀馬くん……ありがとう、私もずっと大好き」



ぎゅっと、彼の背中を抱き寄せて呟いた。



「……瑠亜、俺からの最後の助言な」



息を吐き、彼は私の耳に囁いた。



「──駅に向かえ」