私は息を呑んだ。
頭に浮かんだ人がいたから。
ずっと忘れようとしていた人。
好きになっちゃダメな人なのに──。
「今頭に思い浮かんだのが、瑠亜の好きな人だ」
「っ……」
私は唖然として声も出なかった。
ああ、そうか。
私はまだ、高峰くんのことを、
好きだったんだ──。
「琳斗、今まで見た中で花野井といる時が一番楽しそうだったんだ」
「そう、そしてそれは瑠亜も一緒だったのよ」
「なん、で……」
「分かるわよそれくらい。もう、親友舐めんじゃないわ！」
今にも泣きそうな顔で言ってくる涼香に、私はとうとう涙腺が崩壊した。
度々、涼香は何かを堪えているような表情をしていたな、と思い出す。
私のためにこんな気負ってくれていたんだ……。
「でも、高峰くんは十六夜さんと付き合ってて……私が入る隙もないって言うか、」
「ほんとにそれでいいのか？」
ぽつりと呟いた秀馬くん。
「ずっと好きで好きでたまらなかった相手なのに、気持ち伝えなくていいのかよ」
「でも、」
「俺は伝えたんだ」
「……っ」
