休み時間、私はトイレに行っていたため少し遅れて教室を移動していた。
すると。
「──瑠亜」
ああ、一番恐れていた時が来た。
「……」
「瑠亜、逃げないで」
「っ、」
横を通り過ぎようとすると、両肩を強く掴まれた。
「ねぇ、俺なんかした?なら謝るから言って」
何もしてないよ。
お願いだからそんな顔しないで。
「なんで急に無視すんの。俺を殺す気?」
もう傷つきたくないから。
だから、はやく。
もう十六夜さんに触れたその手を離してよ。
「……」
「こっち見て──え」
無理矢理正面を向かされたと同時に、溜まっていた涙がこぼれ落ちた。
驚いたのか力を緩めた隙を狙い、私はダッシュでその場を去る。
角を曲がった先には。
「待って」
「……っ⁉︎」
十六夜さんがいた。
おそらく、今までの話を聞いていたのだろう。
彼女は射抜くような目で私を見つめ、声を発した。
「ねぇ、花野井さん──」



