その時、ちょうどよく高峰くんが歩いてきた。



「わ、涼香、朝から高峰くん拝めたよ!ラッキーっ」

「え?あ、そうね……」



私は満面の笑みで手を合わせる。



「本当にビジュアルが神……!最高の推し」

「……瑠亜」

「ほら、推しは恋愛対象と違うんだって。私は見れるだけで毎日幸せなの!」



笑顔で一方的に言い切ると、私はスタスタとその場から離れた。

大丈夫、大丈夫。

私は普段通り。



「瑠亜、高峰くんがこっちにきてるってば……ねぇ、聞いてる?」

「あ、秀馬くんだ!おはよーっ」



もちろん見てたよ。

私に気づいた彼がいつものように近づいてきたのを。

もちろん分かってるよ。

それを知っていながら私は彼を──

避けたということ。