──「あっ、琳斗!探したんだからね?」



女の子の声が聞こえて、私はハッと振り返った。

そこにいたのは、まさに天使のような美少女で。


色が白く適度に細い手足、小さい顔。

絹のような髪は先の方が巻かれており、ハーフツインに結ばれている。

ぱっちりした目はアイドル級で、薄くメイクが施されている。

鈴を転がしたような甘い声は、聞く人誰もを魅了する。

華やかで先輩後輩関係なく爆モテしている彼女は、私でも名前を知っている。



「初めましてかな?十六夜天梨(いざよいあめり)です」

「は、初めまして……」

「あなた、花野井瑠亜ちゃんね?よく名前が出るからすぐ分かった」



まさか、認知されていたなんて。

じゃなくて、なんでだろう……十六夜さんの笑顔の後ろに何か感じる。



「天梨が姫役。あと、女子の文化祭実行委員」

「そうだ、琳斗、先生が呼んでたよ?一緒に行こ!」

「分かった。じゃあ瑠亜、また明日ね」

「うん……!っえ、」



思わず笑顔で振った手が止まった。



「……ばいばい、花野井さん〜」



勘違いじゃない。

十六夜さんの不穏なオーラが、私をしばらく動かなくした。