「いっ……!」
「?瑠亜、どうかした?」
「っ……う、なんでもない!
高峰くんが尊くて唸ってた」
「ふふっ、なにそれ」
なんとかして誤魔化す。
バレないようにこめかみを抑えながら上を向くと、やっぱり灰色の雲が広がっていた。
偏頭痛だ……。
雨の日とか、天気が悪い時に起こりやすい。
ちなみにまだ5月だから大丈夫だけど、梅雨なんて地獄以外のなんでもない。
「あっ!瑠亜、見た?」
「うぅ……何がっ?」
「もう、なんでこんな時に見てないの。
今、高峰くんこっち見てたのよ?」
「……そうなんだ」
なんか涼香が言ってるけど耳に入ってこない……。
よりによってこんな時にっ!
その後、道を外れて涼香の家の前まで行き、少し話してから別れた。
家に帰れる、と思った私を絶望に陥れたのが。
──ザアアア……。
「わぁぁぁっ……!」
突如降ってきた雨だった。
確かにあの雲は雨降らせそうとか思ったけどね⁉︎
春は移動性高気圧がなんとかで天気が変わりやすいって理科でやったけどねっ⁉︎ (謎の知識)
──ズキズキっ。
鼓動と同時に痛む頭。
すぐには止みそうにない雨。
見当たらない屋根。
私は立っていられず、電柱の横に座り込んだ。
雨が止むまでここで待っていようかな。
そう思って目を閉じれば、疲れからか睡魔が襲ってきて。
誰の迷惑にもならないし、いっか。
私は静かに夢へと落ちる──。



