きみがいた帰り道

ちょっと長めの髪に、春っぽい薄い色のカーディガン。


おとなしそうな雰囲気だけど、目の奥に、なにか強さみたいなものがあった。


「あ、それ……文学部の“現代文学講義”?」


つい、声をかけていた。


なんでだったか、自分でもわからない。


「あ……はい。たぶん、ですけど」


「やっぱ人気かー……俺、法学部なんだけど、これ取ろうと思ってたら埋まっててさ」


「あ、他学部の人も受けられるんですね……」



そう言って、彼女は少し驚いたように見えたあと、ふわっと笑った。


「私は文学部1年です。結城花奈っていいます」


「……あ、俺、名内颯磨。同じ1年」


「同じ学年なんですね。なんか、先輩かと思いました」


「見た目? それとも態度?」


「……ふふっ、どっちもです」



初対面でなんだその言いぐさ、って思ったけど、
悪い気はしなかった。