きみがいた帰り道


「好き」って言えてよかった。


「付き合おう」って言えて、ほんとうに嬉しかった。


 

だけどその瞬間に、
この幸せを守ることが、急にこわくなった。


私は――


いつまで、颯磨くんの隣にいられるんだろう。

 

そっと、ポケットの中で指先が触れたのは、
いつも身につけていた、小さなブレスレット。


父の形見。


父のぬくもりが、まだそこに残ってる気がして。

 

(お父さん、私、好きな人ができたよ)


心の中で、そう呟いた。

 

だけど、願うようなその声は、

夕焼けに飲み込まれて、静かに風に溶けていった。



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