きみがいた帰り道

それに――


父のことを思い出すたび、心がぎゅっとなる。


事故で亡くなった日。


小さかった私は、よくわからないまま母に抱きしめられていた。


あの日の空の色や、鳴り響いたサイレンの音だけが、やけに鮮明に覚えてる。

 

たまに夢に見る。


知らない小さな男の子が、泣きながら名前を呼んでいた夢。


ずっと昔から、その夢だけは覚えている。

 

(あの子は、誰だったんだろう)

 

どこかで、その“夢”と“現実”が少しずつ交わろうとしているような、不思議な感覚が最近ある。


でも、うまく掴めない。