きみがいた帰り道

「俺、めちゃくちゃ嬉しいんだけど……ちょっと信じられない」


「えー、そこ疑うとこ? 私、わりと本気なんだけど?」


「いや、そういうの慣れてないっていうか……」


「……じゃあ、慣れていこっか。これから一緒に」

 


その言葉に、俺はもう何も言えなかった。


ただ、まっすぐに花奈を見つめた。

 

目の前にいる女の子が、自分の“大切な人”になる。

その瞬間を、俺はきっと一生忘れない。

 


ふたりの間を通り抜ける初夏の風が、
どこかくすぐったい匂いを運んでいった。