きみがいた帰り道

沈黙。


花奈は何も言わない。


顔を見るのが怖くて、俺は空を見た。

夕焼けが、ベンチの影を長く伸ばしている。

 


……やっぱ、フラれたかも。

 


「……私も、だよ」

 


その小さな声は、風よりも優しかった。

 

「え?」


驚いて顔を向けたら、花奈は頬を赤らめて、視線を落としていた。


だけど、その目はまっすぐで、逃げてなかった。

 


「ずっと……颯磨くんのこと、なんとなく気になってて。
でも、それが“好き”なのかどうか、最初よく分からなくて……」


「……うん」


「でも、一緒に話す時間が増えてくたびに、もっと話したいって思うようになって。
で、気づいたら……もう、ずっと考えてて」

 

それは、俺と同じだった。