「花奈、ちょっといい?」

 

その一言を出すまでに、どれだけ時間がかかっただろう。

講義終わりの中庭を、何度も無意味にぐるぐる回って。

タイミングを探すふりをしながら、実際はただ、ビビってただけかもしれない。

 

「うん?」


振り返った花奈が、小首をかしげる。

なんでもない顔で、いつもの笑顔。

その一瞬で、緊張が跳ね上がった。

 

「ちょっとだけ、話したくてさ。あっち、行こ」

 

言いながら、裏庭のベンチを指さした。

花奈は不思議そうに笑いながらも、素直についてくる。