きみがいた帰り道

「ほらほら、それよりクッキー食べよ~!」


由希がタッパーを開けると、ふわっと甘い香りが広がった。


「花奈が作ったの!どうせならみんなで食べようってさ」


「いやそれ絶対うまいやつ」


「わたし今日このために朝ごはん抜いてきたからね」


「健康的にはアウトだろそれ……」

 

タッパーがまわって、俺の前にもやってくる。


「颯磨くんも、どうぞ?」


花奈が差し出してきたクッキーを受け取ると、指先がふれて、ふたりしてちょっと固まった。


「……ご、ごめん」


「いや……ありがと」


口に入れると、サクッとして、ほのかに甘くて。
ああ、こういうの、なんか落ち着く。


「……うまいな」


「ほんと? よかったぁ……」


安心したように笑う花奈。
その笑顔に、また視線が吸い寄せられる。