「……あの、名内くん」
「うん?」
花奈がふいに話しかけてくる。
その声にちょっとだけ、緊張感が混じっていた。
「……この前、図書館で話した時、話しかけてくれて……嬉しかった」
「えっ」
思わず顔を上げると、花奈はほんの少し照れたように目をそらしていた。
「……こちらこそ。俺、ああいうの慣れてないから、ちょっと変な感じになったかも」
「ううん。そんなことなかったよ」
ふと目が合って、またそらして。
──なんだろう、この感覚。
何かをはっきりとは言えない。でも、もう少し話してみたいとは思った。
メニュー