きみがいた帰り道

「……またカレー行列かよ」


トレー片手に学食の列に並びながら、なんとなく呟く。
眠たい講義のあと、無意識にぼんやりしてた。


ふと、前の方から名前を呼ばれた気がして、顔を上げた。


「……花奈、あれ……名内くんじゃない?」


誰かの声に、反射的に振り向いた。


──あ。


図書館の掲示板前で、偶然出会ったあの子。
結城花奈。


「あ……」


「……あっ」


声が重なって、一瞬だけ気まずい沈黙が流れた。


けど、次の瞬間には自然に言葉がこぼれてた。


「この前……図書館で話したよね。掲示板のところ」


「うん、覚えてる」


「……偶然だったな、あれ」


「うん……でも、なんか印象に残ってた」