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私が住み込みで働くエリアス様とミーナ様の離宮は国王様がおられる王都から少し離れた郊外にあります。
美しい泉があるこの離宮は、もともと国王様の母君が好んでお住まいになられていたそうで、王都の王宮にも負けないくらい立派です。
いくらエリアス様にお仕えするためとはいえ、そんな素晴らしい宮殿に住まわせていただけるなんて私は幸せ者です。
おはようございます。朝になりました。
今日もまたエリアス様を起こしてコルセットをぎゅうぎゅう締める時間となったわけです。
無防備なお姿で眠っていらっしゃるエリアス様を起こすのも私にしかできない役目。
いえ、お母様でも構わないのですが、私でないと駄々をこねてなかなか起きないらしく……幼児ですか!エリアス様の駄々っ子!
そんなこんなで今、私は寝台ですやすや眠るエリアス様の前におります。
まずは寝顔を拝見です。
どれどれ。ふむふむ。
スベスベの頬、長い金色の睫毛、少しだけ開いた艶やかな唇。
毎日見ておりますが、毎日思います。
エリアス様こそ眠り姫です!百年眠っていた美女です!
間違いありません。
「なに見てんの?エッチ」
「はうっ!?」
急に片目を開けたエリアス様と視線が合いました。
ビックリです。思わず二、三歩、寝台から離れてしまいました。
「おはよ、ロザリー」
「お、おはようございますっ」
クスクス笑いながら起き上がるエリアス様。
もうっ、毎日からかわれてばかりです。
あら?よく見たらエリアス様、上半身が裸?
またですか!
「また裸でおやすみに!?何度も言いますが、万が一のことを考えて、服をお召しになってから寝てください!」
「ん?べつにいいじゃん。どうせロザリーしか来ないし」
「わかりませんよ?突然ベアトリクス様がお見えになっても知りませんからね」
「王妃様、ね。来たら次の日には革命が起こるな」
「ご冗談が過ぎます!」
「それくらいあり得ないってことだよ。さてと。ロザリー、着替えるから手伝って。それから、今日は王宮に行くよ」
「王宮、ですか?」
「そう。ちょっと用事があるんだ。父さんに」
「お父上ですよ!」
「はいはい。お父上にご用です」


