「はい、喜んで……!」
「っ……ホントのホントに?忠誠心とか憐憫とか、なんとなくじゃなく?」
疑り深いですね。さすがエリアス様。
ですが私の心まで疑って欲しくはありません。
「ホントのホントですよ」
「っ……嬉しい。うん。すっごく嬉しい」
照れながら前髪をかき上げ、エリアス様が更に距離を詰めてきます。
もうお顔は目の前です。
毎日拝見していますが、殿方の格好には免疫がなく、つまるところドキドキが止まらないのですが。
上手く目を合わせられません。
近い!逃げたい!カッコいい!
「今すっごくキスしたい。……ダメ?」
あ、甘い吐息が!
エリアス様の色気を多分に含んだ甘ったるい凶器が!私の耳に!
「ほ、頬に、なら……いいですよ」
「唇は?」
「唇は……ダメです」
「なんで」
ジットリと、不満そうな眼差しで見られます。
だって、だって。
「唇は……結婚して、旦那様となった方にしか、許したくありません」
「そっか……うん。なら早く結婚しよう。そうしよう」
「えっ」
ちょっとお待ちください。
そっとエリアス様の胸を押して話しやすい距離を作ります。
「エリアス様のお立場は複雑です。私と、その……結婚するにしてもですね、早く早くと焦らずに、一度国王様とご相談なされてはいかがでしょうか?」
「大丈夫。もう色々と相談済みだよ。実はさ、ロザリーが俺の求婚にいい返事をしてくれたら、父さんから爵位を一つ貰えることになってるんだ」
「え!?初耳です!」
「うん。驚かそうと思って、内緒にしてた。というか、君が頷けば爵位が貰えるから俺と結婚して、とか言うの狡いだろ?最低じゃん。俺が本当に欲しいものは爵位じゃなくて、ロザリーからの愛なんだから」
微笑んだエリアス様の形の良い唇が頬に触れました。
チュッという音と共に私の頬が一気に熱くなります。
燃えるようです。
「今は、ここで我慢。早く唇も許される男になるから。結婚後、覚悟して」
ぴゃあ!?
いつもより低いお声で御覚悟宣言されてしまいました!
ああ、今でもいっぱいいっぱいなのに、結婚したらおさまらない胸のドキドキが原因で死んでしまいそうです。
エリアス様と結婚の約束をするなんて、早まったでしょうか?
いいえ、そんなわけありません。あり得ません。
自分の気持ちに、正直に。
はい。エリアス様が大好きです。
【END】2025/6/16


