オリーヴィア様は薔薇が好き。


「ではお尋ねしますね。エリアス様、どうしてこのようなことを?私が今夜、レイノルド様と出掛けることは知っていらっしゃったでしょう?」

「もちろん知ってたよ。俺が来たのは邪魔するためだし」

ズバリおっしゃいました。
ちっとも悪いと思っていないご様子です。むう。

「邪魔をするだなんて、紳士のなさることではございません」

「悪いけど、俺は紳士じゃないよ。常に自分優先で物事を考えてる。だからこれは、俺が自己中心的に考えて動いた結果なんだ」

私の手をそっと取って、エリアス様は続けます。

「君を、あいつと二人きりになんてさせたくなかった。デートとか、ふざけんな。ロザリーは俺の隣にいればいいんだ。これからも、ずっと――」

エリアス様の頬が赤く染まり、握る手の力が強くなりました。
そして囁くような、懇願するようなお声でおっしゃいます。

「……好き。好きだよ、ロザーリエ。君が、好き」

ドクンと、胸が高鳴りました。
息が止まりそうです。

ストレートな告白に、私の頬も熱くなります。

「俺、こんなだけど……いつか君を妻にしたいって、思ってる」

思いもよらない発言に、思考が停止します。
頭の中が真っ白です。

え?夢ですか?もしくは幻聴?

「俺と、結婚してくれますか?」

甘えるように。ねだるように。
最大限の色気を発揮して迫ってきます。

エリアス様、ズルい殿方です。

「わ、私、などでは、そんな、その……お、恐れ多いですっ!!」

「なんでさ。身分の問題?それなら俺の方が恐れ多いよ。俺は王と庶民の間に生まれた半端者だけど、君は歴とした貴族の御令嬢だ。本来、俺なんかが声をかけることすら許されない」

「ご、ご冗談を!」

「冗談なんかじゃないさ。俺は、父さんが母さんを寵愛してるからチヤホヤされてるだけ。父さんが俺と母さんを捨てたら何も残らない。立場や身分はめちゃくちゃ危うい存在なんだよ。だからこそ、今の状況は俺にとって奇跡だ」