「ではお尋ねしますね。エリアス様、どうしてこのようなことを?私が今夜、レイノルド様と出掛けることは知っていらっしゃったでしょう?」
「もちろん知ってたよ。俺が来たのは邪魔するためだし」
ズバリおっしゃいました。
ちっとも悪いと思っていないご様子です。むう。
「邪魔をするだなんて、紳士のなさることではございません」
「悪いけど、俺は紳士じゃないよ。常に自分優先で物事を考えてる。だからこれは、俺が自己中心的に考えて動いた結果なんだ」
私の手をそっと取って、エリアス様は続けます。
「君を、あいつと二人きりになんてさせたくなかった。デートとか、ふざけんな。ロザリーは俺の隣にいればいいんだ。これからも、ずっと――」
エリアス様の頬が赤く染まり、握る手の力が強くなりました。
そして囁くような、懇願するようなお声でおっしゃいます。
「……好き。好きだよ、ロザーリエ。君が、好き」
ドクンと、胸が高鳴りました。
息が止まりそうです。
ストレートな告白に、私の頬も熱くなります。
「俺、こんなだけど……いつか君を妻にしたいって、思ってる」
思いもよらない発言に、思考が停止します。
頭の中が真っ白です。
え?夢ですか?もしくは幻聴?
「俺と、結婚してくれますか?」
甘えるように。ねだるように。
最大限の色気を発揮して迫ってきます。
エリアス様、ズルい殿方です。
「わ、私、などでは、そんな、その……お、恐れ多いですっ!!」
「なんでさ。身分の問題?それなら俺の方が恐れ多いよ。俺は王と庶民の間に生まれた半端者だけど、君は歴とした貴族の御令嬢だ。本来、俺なんかが声をかけることすら許されない」
「ご、ご冗談を!」
「冗談なんかじゃないさ。俺は、父さんが母さんを寵愛してるからチヤホヤされてるだけ。父さんが俺と母さんを捨てたら何も残らない。立場や身分はめちゃくちゃ危うい存在なんだよ。だからこそ、今の状況は俺にとって奇跡だ」


