オリーヴィア様は薔薇が好き。


「そんなっ!まさかもう、そいつと……!?」

「え?」

まさかもう、とは?
意味がわからず首を傾げたらエリアス様が意地悪そうなお声でおっしゃいました。

「フフッ……可愛かったですよ。俺のロザーリエは」

「なっ、なんということだ!君がそんなふしだらな女性だとは思わなかった!」

お顔を真っ赤になさって叫ぶと、レイノルド様は逃げるように馬車へ乗り込んでしまいました。

そのままレイノルド様の馬車が動き出し、宮殿を後にします。
残された私は背後のエリアス様を見上げました。

「どういうことですか?」

「えっと……」

「私、ふしだらな女なのでしょうか?」

「いや全然!俺のロザリーがふしだらとかあり得ないし!」

俺の、ロザリー?
先程から俺の俺のとおっしゃっておりますが、その……。

「いつから、私はエリアス様のロザリーになったのでしょうか?」

とても嬉しいのですが、突然すぎて思考が色々と追い付きません。

「話は中でしよう。ほら、乗って」

もう一台の馬車はエリアス様のものでした。
二人で箱馬車に乗り込み、扉を閉めます。

御者はシェイエルン家で私のお父様の従僕をなさっている男爵家のご子息、ヨハン様でした。
年齢は二十歳とお若いですが、従僕として信頼できる殿方です。


馬車が走り出し、景色が動き出しました。
遠ざかる宮殿を見つめてから、私は隣に座るエリアス様に向き直ります。