「どういうことだい!?今夜、彼女と約束をしたのは僕だ!」
「そうでしょうね、侯爵。けれど、彼女は俺を選ぶ。彼女にとって、俺以上に大切な男はこの世にいないんですよ」
停車している馬車のすぐ横で、二人の殿方がお話をしていらっしゃいました。
一人はレイノルド様です。
もう一人は、とても美しい金髪の――。
「そうだよね?ロザリー」
金髪の殿方が私に向き直り、その青い瞳で真っ直ぐ私を見つめてきました。
お顔を拝見して、叫びそうになります。
なんとその方は、エリアス様でした。
「なっ、え、ど、どうして……!?」
「迎えに来たんだよ。今宵は俺と過ごしてくれるでしょ?」
いつものドレス姿ではありません。
化粧もしていませんし、髪も結っておりません。
ちゃんとした殿方の夜会服を着て、どこからどう見ても殿方にしか見えないエリアス様が目の前にいらっしゃいます。
呆気。呆然。お口あんぐりです。
カッコ……いい。カッコいいですエリアス様!
なにこれズルい!
「シェイエルン伯爵令嬢、お知り合いですか?」
レイノルド様に尋ねられた私ですが、ぽやんと見惚れている間にエリアス様が答えてしまいました。
「ロザリーは俺の恋人だよ。貴方はこの子と結婚したいらしいけど、申し訳ないね。すでに俺のものなんだ。心も、身体も」
背後からエリアス様にギュッと抱き寄せられます。
まるで見せつけるように。
これは、とても恥ずかしいです!
というよりエリアス様!どこを触っていらっしゃるのですか!
胸を撫でるのはおやめください恥ずかしい!


