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エリアス様のお世話をしていると、三日など早いもの。
あっという間にレイノルド様との約束の時間になってしまいました。
一応、頑張ってオシャレをしてみましたが……このドレス、やっぱり地味だったでしょうか?
胸元のレースが綺麗でお気に入りなのですが、色がグレーだから華やかな雰囲気とは程遠くなってしまいました。
オリーヴィア様が着ればきっとこのドレスだって華やかに見えるのでしょうけれど、もとが地味な私なのです。
何を着てもあまりパッとしません。
そこはもう諦めます。
オリーヴィア様といえば、今日はほとんど一緒におりませんでした。
午前中は普段とあまり変わらなかったのですが、午後から私に内緒でお一人でどこかへ出掛けてしまったらしく、宮殿内を探し回っていた私はお母様からその話を聞いてガックリしました。
置いてきぼりです。悲しいです。
いつでもどこでも、オリーヴィア様のお側でオリーヴィア様のことをお支えしたいのに、黙って行ってしまうなんて。
信頼されてないのでしょうか……?
そんなことはないと思いたいのですが、隠し事をされるのはやっぱりショックなのです。
「ロザリー、オルトラント侯爵様がお見えになったわよ。お待たせしないようにね」
「わかりました。行ってまいります、お母様」
もう時間です。ああどうしましょう。
レイノルド様との結婚話をどう断ろうか、結局いい考えが思い付きませんでした。
うう、憂鬱です。
「ああ、それからロザリー」
「なんでしょうか?」
「結婚のことよ。お父様から貴女にお話があったでしょうが……自分の気持ちに、素直にね。お母様は貴女の幸せを望んでいるわ」
「お母様……」
私の心をお読みになったのか、優しい眼差しでおっしゃってくださいました。
ありがとうございます、お母様。
「まあ、ビックリしないようにね。覚悟なさい」
「え?それは、どういう……?」
「さ、お待たせしないの。行きなさい」
背中を押されて離宮の外へ出ます。
すぐそこには馬車が二台ありました。
あら?なぜ二台も?
一台はレイノルド様の迎えの馬車でしょう。
もう一台はどなたのでしょうか。


