オリーヴィア様は薔薇が好き。



あら?珍しくオリーヴィア様がお顔を真っ赤になさいました。
怒っていらっしゃるのでしょうか?
それとも、図星を突かれてしまった、とか?

あら?嫉妬?嫉妬が図星?

「コホン……。ラインドンク様、わたくしには彼女の女主人としての義務がございます。彼女が無礼を働かぬよう注意するのも、彼女に無礼を働く輩がいたらそれを遠ざけるのも当然のことです。彼女の品行がわたくしの評価にも繋がりますから。それを単なる女の嫉妬心とおっしゃるなんて、不躾にも程がありますわ。これだから、ものを知らぬ庶民は嫌なのです」

ズバッとおっしゃいました。
オリーヴィア様、容赦ないです。

「ほお、成る程。では、僕と貴女は似た者同士のようだ。オリーヴィア・クライン」

ラインドンク様が微笑みます。けれどその笑みはキラキラしていた先程のものとは程遠く、他人を小馬鹿にするような嘲笑でした。

「君だって、たかが娼婦の娘だろう」

あっ。
これはオリーヴィア様の地雷ではっ!?

案の定です。気付けばオリーヴィア様がラインドンク様の胸元を掴んでいらっしゃいました。

「母を侮辱することは赦しません!いくらわたくしの父に気に入られていようと、口が過ぎれば貴方を宮廷から追い出しますよ!」

「できるものならば、ご自由に。貴女にそれほど力があるとは思えませんが」

ギリリと歯ぎしりなさるオリーヴィア様。
今にも殴りかかりそうな剣幕です。

ケンカはダメ!落ち着いてくださいエリアス様!
淑女に戻ってぇ!!


「……テメー、今度会ったら覚えてろよ」

「おやおや、からかい過ぎましたか」


何やら低いお声でコソコソと囁きあった後、何事もなかったかのようにエリアス様はラインドンク様から手を放しました。

そして私に向き直り、いつもの完璧なオリーヴィア様で話し掛けてきます。

「さあ、行きましょうロザリー。歩けるかしら?」

「は、はいっ、大丈夫です」

ラインドンク様の隣からオリーヴィア様のお側へと戻ります。
もう転ばないように気を引き締めて歩かなければ!