オリーヴィア様の後ろにくっついて、そんな雑念で頭の中を天国にしていたからでしょうか。
突然でした。私の足首が、グキリと。
気づいたら何もない廊下で足首を捻って転びそうになっておりました。
ああ、オリーヴィア様自慢ばかりのダメな侍女に天罰なのでしょうか、神様。
「ロザリー!」
オリーヴィア様の焦ったお声が聞こえます。
そして私の身体は床に――……あら?
床に倒れるはずだった私の身体はどなたかに抱きとめられておりました。
視界に入るのは殿方のお洋服です。
見上げれば、そこには仄暗い灰色の瞳が。
「大丈夫ですか?お嬢様」
「っ、ラインドンク様!?」
助けてくださったのはなんと、今をときめく宮廷画家、オスヴィン・ラインドンク様でした。
スラリと背が高く、美しいプラチナブロンドが魅力的なラインドンク様はご婦人方からとても人気があります。
お若いながらも優れた才能をお持ちでいらっしゃるラインドンク様は貴族だけでなく市井の方々からも評判が良く、裕福な商人や教会からも絵の依頼を頼まれるのだとか。
私もラインドンク様の絵はとても好きです。
以前、オリーヴィア様のことも描いてくださったのですが、三割増しでオリーヴィア様が天使に見えました。
もう、最高なのです。惚れ惚れしてしまいました。


