放課後の図書室。
メモ帳は、ちゃんと今日もあの場所にあった。


(……あるってわかってても、ドキドキするのずるい)


ページをそっと開く。

『部活はサッカー。まあ、ポジションは……それなりに目立つ方かも?
でも、最近は勉強と両立が難しいよ。たまに図書室で落ち着くの、わりと気に入ってる』


…やっぱり。
 
サッカー部。


それに…、“目立つポジション”って


これってもう、タクミ先輩ってことでいいよね!?

しかも、図書室のことも書いてあるし——


勉強との両立って

先輩、3年生だし受験生だし、成績もいいとしても悩みはあるんだな…

ちょっと、親近感。


胸が、また勝手に跳ねた。

私……、タクミ先輩と、話してる。

やばくない?



私はペンを取った。

その手がちょっと震えてたかもしれない。気のせいかな。


『サッカーと勉強、どっちもってすごい…!
すごすぎて、正直ちょっとびっくりした(笑)
息抜きとか出来てる?私は動画見るの好きだよ!』


ほんとは、

『あなたはだれ?』

そう書きたかった。



だけど、それを聞いてしまうのは、なぜだかルール違反に思えた。


このメモの、“コロッケパン”さんに、私に気づいてほしいし
“コロッケパン”さんの正体を知りたい。会いたい。


……でも本当にタクミ先輩だったら

会うのは緊張しちゃうな。
二人で会うのなんて無理だから、誰か……親友の茜に付いてきてもらったりとか?

なんて今からそんなこと考えたって意味ないって。


首を横に振って、メモ帳を閉じて、戻す。


顔が熱い。赤くなっちゃってるかな?

もうどうしたらいいかわからない。


閉め切った窓の向こうでサッカー部の声が遠く聞こえる。


私、まじで――

このメモにみんな持っていかれてるかも。