図書係の嘘と恋




その夜、私は机に置いたメモ帳を前に腕組みをしていた。


このメモ帳で出会った“コロッケパンさん”


私は、コロッケパンさんはタクミ先輩だと思っていた

けど。
それが私の勝手な思い込みだったとしたら。

タクミ先輩はまるっきりこのメモ帳と関係なかったとしたら。


じゃあ、コロッケパンさんは本当は誰なの?




「……」


私はペンを取った。


あの、インクがちょっと光るお気に入りのペン。

このペンを使うことで、私の中のゆらゆらが止まるような気がした。



『今度、コロッケパンさんのサッカー部の練習見に行ってもいいですか?」


自分でも予想外なくらい、簡単に書けた。




翌朝、私は教室に行く前に図書室へ行って
あの場所にメモ帳を置いた。


そして放課後。


メモ帳はそこにあった。

メモ帳に伸ばす私の手は、もう震えていなかった。

シュウが一緒にメモ帳を探してくれたことが、なぜか鮮明に思い浮かんでた。


怖い気持ちはあったけど、
でも、きっと私は最初からうっすら気づいてた。


このメモ帳のやりとりは、いつか終わるって。

いつか終わるけど

いつか終わるから

ずっと続けばいいって夢を見てた。

いつまでも、続くわけはないのに。



ふう、とひとつ息を吐いて、
また吸って、
私はメモ帳を手に取り、開く。


新しいページに、いつものインクでこう書かれていた。



『明日、階段下で待ってて』