いつもの場所、

一番奥の本棚の、古めかしくて分厚い本の影。

そこに置いたはずのメモ帳は、姿を消していた。


「……うそでしょ……」


なんで。

置いたばっかりなのに。

まだタクミ先輩はここに来ていないのに。


なんで?

なんで?なんで?


胸の中がぞわっと泡立ったみたいにむずかゆくなる。

息が浅くなって、心臓がだんだん早くなっていく。


「うそ…、嘘でしょ」

棚に並んだ本の間を調べてみる。

手が、指の先が冷たい。うまく動かせない。

ホコリが積もった本と本の間を震える指で探していく。


でも、なかった。

(……誰かが持ってった?)

それか、間違って捨てられた?


ううん、違う
この本棚のところに誰も来なかった。

予鈴が鳴るまで、私はここにいたんだもん。誰も来てない。



(あっ、もしかして!)


忘れ物としてカウンターに届けられているかも。

図書室での忘れ物は、カウンターに預けられて図書係が職員室まで持っていく決まりだ。

カウンターの中の“忘れ物ボックス”に、メモ帳あるかもしれない。


そう思い当たった私は慌てて振り返る。

慌ててたから、そこに誰かがいるなんて思いもしなかった。


「うわっ」

「きゃっ」


思いがけない衝撃によろけてしまった。

「なに…?」



視線をあげると、そこにはなぜかシュウがいた。