間違いから始まる恋


と、まぁ結局引き受けるハメになっちまったんだけど。


でも幸田に何て言って渡しゃいいんだよ。


「これ、御子柴から」とか?


あれこれ考えている内に結局一週間経ち、その手紙は俺の元で止まっているワケだが。


その一週間、御子柴の「ね、渡してくれた?」攻撃にやられてダメージ100の俺。


あれ??


俺、何でダメージ受けてんの?


最初は手違いとは言え幸田宛の手紙を俺が受け取ってしまったが、そのときはそれほど意識してなかったのに、御子柴から進捗を聞かれる度に、胸がズキズキ痛む。


何で……?


しかしチャンス(?)は思いがけないときにやってきた。


それは体育の授業の前、体操着に着替え終わった俺は当日施錠係で更衣室の施錠をしようとしてたところ、幸田が滑るように更衣室に入ってきた。


「ワリ、小田切!ゼッケン忘れた」


幸田はロッカーの中をごそごそまさぐっていて、ゼッケンは授業でやるバスケのために必要だったから取りにきたんだろうな。体育教師はイマドキ珍しい熱血タイプで忘れ物をするとグラウンドを走らされる。


「あ…幸田、そいやさ~」と声を掛けたが


幸田はついでと言う感じにスマホを見て「ヤッベ、ミカに返事するの忘れてた」と一人ブツブツ。


「ミカ?」思わず聞くと


「あ、うん。隣のクラスの相川、あいつと付き合ってんだよね、俺」と幸田は自慢げ。


相川はこの学年イチ可愛いと噂の女子で、狙ってる男がわんさかいる。


「え、そう」


そう答えるしかできない。


くっそ!幸田と相川、美男美女で超お似合いなんですけど!!




結局、御子柴の手紙は渡せずに居た。




この事実を知ったら―――御子柴はぜってぇ傷つくよな。泣くかもしれない。


泣かせたくないな。


それを考えると胸の奥がズキズキと、一番痛いところを突かれているような。そんな気持ちになった。