続・バーテンダーズ - Life with Cocktails -

エルさんと服装はまったく同じである。真っ白なシルクのシャツと黒いスラックス姿。しかし、
こちらは、青い革のアームバンドをしている。
首から下げているのは、青いサファイアのペンダントだった。

黒い前髪はさらりと長く真ん中分けで、細いタレ目にかかりそうだ。
肌は日に焼けているのか黒く、丸顔で、鼻は大きく丸く、唇は色あせて薄い。左アゴに大きなホクロがある。
なで肩だが体格が良い。胸板が厚い。身長はエルさんと同じくらい。
そして、

「あっ、新しいお客様だ。
はじめまして。アールと申しまぁす」
(ゆるい!!)
小さい頃、上野動物園で見たパンダを思い出す。こののんびりとした雰囲気。パンダだ!!

「生ビールいただいてまぁす。ありがとうございまぁす」
(パンダがグラスで生ビール飲んでる……)
アールさんはエルさんが座っていた椅子に腰かけ、美味しそうにワイングラスの中のビールをゴクゴク飲んでいる。太い首から浮き上がった喉仏が踊るように動く。
(私も生ビール飲みたくなってきた)
と、

エルさんが小さな器に盛ったビーフシチューを銀盆に乗せて戻ってくる。
「アール。おまえパンダみたいだぞ」
「えー?」
いきなり美形が言葉をくずさないでほしい。ドキッとする。生ビールを注文したくなる。
私が恐る恐る、グラスの生ビールを注文すると、
「ありがとうございます。
パンダ、ゴー」
エルさんはにこやかに笑った。にこやかにアールさんをこきつかった。似合いすぎてここの空気が美味しい。

「あ、あの、
エルさんは、アールさんがある日突然、女装したらどう思います?」