続・バーテンダーズ - Life with Cocktails -

エルさんが静かに右側にシェイカーを構える。両手で持って。フタは左手の親指でしっかり押さえる。
(きちんと男性の手だわ。肉づきが良くて、指がすらりと長い。大きな手)
背筋をピンと伸ばした立ち姿。唇にほんのり浮かぶ笑み。細身なのにとても頼もしく見える。
強くシェイクをはじめる -
(きれい)

カウンターのしぼったオレンジ色の照明の下、お酒のビンが並んだ棚をバックに、
エルさんが強弱をつけてシェイカーを振る。いっさい無駄のない動き。そう、ダンスのような -
(本当にきれいだわ。そして、)

スクリーンの中のひとのように遠い。
(天国にいるひとのように)

夢だわ。これは夢。
(あのひとはもういない)

カクテルグラスにさっと注がれる透明な液体。すっと添えられるそろえた指。
(夢だ)
だって、
私は、目の前の光景がいつか消えてなくなることを知っている。
(突然来た別れのように)

「お待たせいたしました。お客様」