続・バーテンダーズ - Life with Cocktails -

「ふふ。私は気づくわよ」
「視力が良いのですね。素晴らしい」
「ふふふ」

エルさんが「お客様、しばしお待ちくださいませ」と静かに言い置いて動いた。馴染みのお客さんが来たらしく、
ふたつとなりの席に着いた40代前半くらいの金髪で黒いスーツをまとったひとと話しはじめる。英語なのだろうか。よく聞こえない。
(寂しいな)

私は目の前のフルートグラスを見た。半分のオレンジジュース。さっき夕食をいただいたので、これ1杯しか飲めない。
(どんどん食べられなくなっていく……)

「お客様、はじめまして。
エルと申します」

「プッ」
アールさんの突然のエルさんモノマネに、私はつい吹き出してしまった。あわてて右手で口を押さえる。
「お上手だわ」
「ありがとうございます。良く言われます。
あ、お客様」
「え?」

「エルがシェイカーを振りますよ。ぜひごらんください」