短い黒髪にゆるいウェーブがかかっている。透き通るような肌の持ち主で、黒い目がぱっちりとしてまつ毛が濃く長く、鼻が高く、
紅い唇がぽってりとした面長の美青年だった。右目と左口元の小さなホクロが印象的だ。

バーテンダー服を着ていた。黒いスーツのような。白いワイシャツと蝶ネクタイ。
黒い髪に黒い服が似合う。海外の映画俳優のように美しかった。
確信した。
彼は、私の夫の生まれ変わりだ。

彼は週に2回、こちらのホテルのバーに勤務していると言った。私に週2回の楽しみができた。
お酒はもうずいぶん長いこといただいていないけれど、ジュースなどもあるらしい。ノンアルコールカクテルと言うものも。
週に2回、カウンター越しに彼としばし語らう。彼は「『エル』とお呼びくださいませ」と優雅に言った。どう言う意味があるのだろう。その名には。

「お客様からごらんになって、
左側によくいるのがエル、右側によくいるのが私です。
なので、彼はエル、私はアールとみなさまに親しみを込めて呼んでいただいております」