小さいお店だ。カウンター席が5つしかない。
壁は白く、牧場を描いた水彩画や、千代紙で作った和風の人形、
鉛筆で描いた有名人の人物画など5つの作品が小さな額に入って飾ってあり、
真新しい木製のカウンターの端には、化学の実験で使うフラスコのような形の白い陶器の花器に真っ青な紫陽花が2輪飾ってあった。
スツールは薄い黒だ。小さな背もたれがついていて、座り心地が良さそうだ。

窓には白いレースペーパーが貼られ、オレンジ色の街の灯りがその模様を透かしていた。
店内はほんのりと明るい。天井を見上げると、スイセンの花を集めたようなシャンデリアが見えた。
カウンターの向こう、正面には、さまざまなお酒のビンが並んだ木製の棚が見える。知っている有名な銘柄のほかに、
見たことのないビンもたくさんあった。

「ね、アールさん、
運命はありますよねー?」
友人が高い声でカウンター内の椅子に座っているバーテンダーに聞く。この子、また男に媚びてる。
「んー、俺、わかんないですー」
(うわ、頼りなさそうな男!!)
バーテンダーはニコニコしながらのんびりとそう答えた。なんか独特のペースのひとだな。