歩いて5分ほど、薄汚い団地の前で男の足はとまった。 「ここ」 「ここ?」 「俺の家」 「……」 「何もしない。約束する。信じられないだろうけど、誓う」 月明かりが、男の真剣な顔を照らす。 「なんかしたら、あたしはあんたを殺して自分も死ぬ」 「オーケー」 男が階段を昇っていくのを、あたしもまた少し間をあけて昇りはじめた。