「……あんな、クズ男。聖女様に熨斗を付けてくれてやるところだけど、今夜の卒業式までほんっとうに私は我慢したわ。少々の仕返しはさせてもらって、当然よね」

 正直に言えば、あまりにも意見を聞いてもらえずに、心折れかけた日もあった。悪役令嬢が不登校になるところだったのよ。今日の日のために耐えたけれど。

 そんなこんなあり、三年間通った貴族学校も、いよいよ今夜で終わり。

 明日の朝には寮からも出て行けるし、既に荷造りだって済ませて準備済だ。

 婚約破棄を宣言されたと言っても、これはデニス王子の思い込みによる独断。

 何かしら法的根拠のあるものでもないし、悪事を理由にと言われても、既にデニス王子よりも立場が上の方々が私が無実であることを知っている。

 だから、『婚約破棄された貴族令嬢』と言われても、された私ではなく、したデニス殿下の噂で持ちきりになりそう。

 そんな人たちを横目に、私はスカーレット公爵邸へと帰るわ。だって、私は何も悪くないもの。

 ……ああ。今夜はとっても良い夢が、見られそうだわ。

 私はルンルン気分で鼻歌を歌いながら、女子寮への道を進んだ。

「っわ!」