けれど、実は私はこの乙女ゲームを知らない。転生前に何個か嗜んだこともあったけれど、キャラ名には一切の聞き覚えもなかった。

 よって、細かいストーリーなんて何も知らないけれど、貴族学校入学式から、乙女ゲーム王道テンプレ展開で進んで行った。

 デニス王子の婚約者である私は、悪役令嬢の役割だった。

 とりあえず断罪はされたくないからと、なるべく彼らを避けて通るものの、そんな努力をあざ笑うかのようにして、私はいつの間にか悪役令嬢になっていた。

 やってもいない悪事もいつの間にかやっている事にされて、品行方正なデニス王子が庇うエリカ様は、いつも悲劇のヒロイン顔だった。

 ゲームの強制力というものかもしれないけれど、私が悪役であれば彼らにはとても都合が良くなる。私ではない証拠を提示しても、決して認めてはくれなかった。

 そして、私はそんな二人に対して、心からの苛立ちを感じていた。自分たち二人が幸せになるなら、私を不幸にしても良いよねと思って居るに違いないからだ。

 だから、私は二人が一番に嫌がるだろうことをしてやろうと、以前から考えていた。