愛するお二人はどんな困難があっても、切り抜けられるものね?

 驚きで声が出ない二人を置いて、婚約破棄からの思わぬ展開にこれから先を楽しみにしていそうな生徒たちをかき分け、私は貴族学校の卒業式の会場から出て行った。

 衛兵に両脇を固められた大きな扉を出て、しずしずと廊下を抜ける。

 そして、ひと気のない庭園にまで出て来ると、あまりの開放感に思わず両手を開いて夜空へと掲げた。

「っやったー!!! デニスからの婚約破棄よーーーー!!! もう二度とあの二人に関わることも、二度とないのよ!! さっいこうーーーーーっ!!!!」

 ええ。私こと、アンジェラ・スカーレットは、どう考えても、乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた。

 異世界転移してきた聖女エリカ。それに、どう考えても顔面偏差値の高すぎる男性たちが、彼女を取り巻く。

 なんだかんだ紆余曲折あって、彼女は一番身分の高い王子様デニスと交際し結婚することにしたようだ。

 貴族学校入学式に記憶を取り戻した私は、デニスと結婚するのなら私との婚約破棄イベントは避けられないと踏んだ。