その天然石の店は、とある大きな神社へと向かう狭いけれど活気に満ちた通りに這入ったばかりのところに、
まるで100年前からそうして在ったかのように静かに佇んでいた。
君と僕は学校の帰りに、途中下車をしてそのこじんまりとした店に這入るのが半ば習慣のようになっていた。
習慣のようになっているにも関わらず、その狭い店も、老齢の店主も、いつも他人行儀に僕らを新参者として扱った。
若い僕らは常に刺激と新鮮味を求めていたから、その店に這入る度に感じるよそよそしさを歓迎していた。
這入ってすぐのところには、加工された誕生石や、比較的名の知れた天然石のコーナー。透明な翠色のペリドット。ほの甘い初恋のようなピンクのローズクオーツ。遠い異国の海の色を湛えたトルコ石。
そして、
「何で此処に有るんだろうって顔してる」
3段程の石造りの階段を下りた右側の棚に、その石は静かに在った。
「隕石」
毎日のように僕らはその店を訪れていたにも関わらず、
その隕石のかけらを見つけたのは初めてだった。
素っ気無い手書きの流麗な筆文字で真っ白な紙片に、その隕石はアフリカの何処其処に落ちたものだと書き添えられていた。
しかも廉価だ。
縦4センチ、横3センチ程のプラスチックの透明な箱に収められた其れは、
「何で此処に居るんだろうって顔してる」
表面はでこぼことしていて、黒い砂のようなものがまぶされ、形はまるで古代の石器の槍先だった。
君は、その清楚なキネマ俳優に似た横顔を今日の天気のように曇らせた。
まるで100年前からそうして在ったかのように静かに佇んでいた。
君と僕は学校の帰りに、途中下車をしてそのこじんまりとした店に這入るのが半ば習慣のようになっていた。
習慣のようになっているにも関わらず、その狭い店も、老齢の店主も、いつも他人行儀に僕らを新参者として扱った。
若い僕らは常に刺激と新鮮味を求めていたから、その店に這入る度に感じるよそよそしさを歓迎していた。
這入ってすぐのところには、加工された誕生石や、比較的名の知れた天然石のコーナー。透明な翠色のペリドット。ほの甘い初恋のようなピンクのローズクオーツ。遠い異国の海の色を湛えたトルコ石。
そして、
「何で此処に有るんだろうって顔してる」
3段程の石造りの階段を下りた右側の棚に、その石は静かに在った。
「隕石」
毎日のように僕らはその店を訪れていたにも関わらず、
その隕石のかけらを見つけたのは初めてだった。
素っ気無い手書きの流麗な筆文字で真っ白な紙片に、その隕石はアフリカの何処其処に落ちたものだと書き添えられていた。
しかも廉価だ。
縦4センチ、横3センチ程のプラスチックの透明な箱に収められた其れは、
「何で此処に居るんだろうって顔してる」
表面はでこぼことしていて、黒い砂のようなものがまぶされ、形はまるで古代の石器の槍先だった。
君は、その清楚なキネマ俳優に似た横顔を今日の天気のように曇らせた。



